趣味

小林宏七段、10歳差の師匠と酒を飲んで語り合った日々


2013.08.07

真部一男九段(左)と小林宏七段(右)。写真提供:河井邦彦

小林宏(こばやし・ひろし)七段は16歳になる直前に、真部一男(まなべ・かずお)九段に入門した。当時の真部九段は26歳で、歳はわずか10歳差。「今も昔も、四段以上で年齢差10歳の師弟関係はほかにないと思います」と小林七段は述懐する。真部九段の自宅での研究会には将棋界の若手が集まり、深夜までお酒を飲みながら将棋を指していたという。当時の懐かしい風景を、小林七段が回顧する。

 

*    *    *

 

師匠の自宅では時々研究会を開催しており、僕が奨励会員だったころは大人数で、棋士になってからは最初は4人くらいで、そのうちに1対1でも将棋を教えていただきました。研究会の開始時間ですが、昔は一般的な午前10時でしたが、そのうちに午後1時となり、数年ごとに2時、3時、4時と、いつの間にかどんどん遅くなっていきました。これは、師匠の起床時間に合わせての変化だったと思います。確か5時開始というのも、数回あったような気がします。

 

夕方5時は、他の研究会なら終わるころの時間なので、朝型人間の自分には大変でした。1対1以外のときは、将棋を指したあとウイスキーを飲みながらのゲームとなります。

 

ゲームでなくて、将棋界の未来を語ることもありますが、いずれにしてもいつの間にかだんだん何をしているかが分からなくなり、気づいたときには始発電車が動いています。

 

そんなことを繰り返していくうちに、師匠のところに行くときは「時差」というものを意識するようになりました。時計を見て夜中の12時になると、「今は夕方の6時なんだ」と思い込むようにしていました。

 

酔った勢いでの失敗はいろいろとありますが、順位戦の前日の夜中に電話したことだけは、鮮明に覚えています。

 

先輩棋士と代々木で飲んでいて電車がなくなり、師匠を呼ぼうということになって、かなり泥酔した状態で弟子が電話をかけました。するとひと言「悪いけど、明日対局なんだよな」。翌日はB級1組の順位戦で、佐藤大五郎九段との一戦は降級決定戦に近い勝負将棋であることを思い出し、一瞬のうちに酔いがさめていきました。

 

さすがにあのときの午前1時を、時差があるから午後7時とは、思い込むことはできませんでした。

 

練習将棋は数百局と教わっていますが、公式戦での対戦は1局だけです。

 

王将戦の予選で、A級に復帰したばかりの師匠に勝てたことは大きな自信になりました。

 

NHK杯初出場のときには、解説をしていただきました。勝ちはしましたが、途中に一手、相手の手を見落としており、そこですかさず「小林は見落としましたね」とさすがに的確な解説でした。

 

終了後、かなり早い時間でしたが、代々木でNHK杯初勝利のお祝いをしてくれました。僕が20〜30代で師匠が30〜40代だったこの時期は、深夜まで(正しくは明け方まで)お酒を飲んだ記憶ばかりが残っています。

 

■『NHK将棋講座』2013年7月号より

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