趣味

初出場から40年 清成哲也九段、36回目のNHK杯


2021.08.31

左/潘 善琪八段、右/清成哲也九段 撮影:小松士郎

第69回 NHK杯1回戦 第9局は、【黒】潘 善琪(はん・ぜんき)八段と【白】清成哲也(きよなり・てつや)九段の対局となった。松浦孝仁さんの観戦記から、序盤の展開を紹介する。

 

*  *  *

 

今期から始まった、「対局前のひと言」。清成哲也九段は感慨深そうにこう語った。

 

「初出場から40年になります」

 

ただいま59歳。NHK杯には9年連続36回目の出場だ。第42回大会では頂点まであと一歩と迫る、準優勝を果たしている。

 

まさにNHK杯の生き証人。後日、思い出話を聞かせてもらった。

 

「対局室と解説室の間の扉が分厚くなったのは、私の対局がきっかけと思っています」

 

解説は梶原武雄九段だった。オールドファンなら想像できるだろう。いつもの調子で「これはダメだ!」「オワ!(碁は終わり)」と、厳しい指摘が続いたそうだ。なんとその全てが対局室に筒抜けだった。

 

「私も対局相手の方も梶原先生が怖くて。固まって打っていました(笑)」

 

今では完全にシャットアウト。対局室には一切解説の声は聞こえない。

 

潘善琪八段は清成が初出場を果たすちょっとだけ前に生まれた43歳。こちらは3年ぶり、8回目のNHK杯だ。結婚して10年くらいになる。奥様は今回の出場をとても喜んでいるそうだ。しかし、潘には弱点が。本人いわく、かなりの「あがり症」なんだとか。開始前の「ひと言」の収録は「ああいうのは本当に苦手で(笑)」。緊張感は極限まで達したのではないか。棋士にこの手のタイプは多い。ただし、盤の前に座れば、まったく違う顔になる。

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潘、緊張感を振り払えるか?

 

対局開始にあたって礼を交わす時、清成は対局者の間にあるアクリル板に頭をコツンとぶつけた。関西人らしい「ボケ」かと思ったが、表情を見るとそうではないらしい。黒番の潘は二連星から左上のカカリへ。白が6から10のツケ引き定石を選択すると、黒11と左下隅に足を伸ばした。

 

「白12に黒13はバランスを考えました」と解説の林漢傑八段。穏やかな立ち上がりと言っていい進行だ。

 

ところが、続く清成の一手で急変する。ズバッと白14の打ち込みだ。

 

林八段「黒は意表をつかれたかも?」

 

潘は黒15から19と迎撃態勢を取る。白20に黒21はもちろん黒Aの両ノゾキを狙っている。白は何か対策が必要だ。1図の白1と先を急ぐのは黒2によって3と4が見合いになる。

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清成は白22のツケで両ノゾキを回避した。ここの突破を許すわけにいかない黒は23にハネ出す一手。そこで白24に切れば自然な流れの中で守ることが可能だ。

 

続いて2図の黒1は白2とこちらをツグのが大切。△は捨ててもいいと思いつけばクリアできる関門だ。黒3、5は直前の□(実戦の白22、24)のおかげで全く怖くない。

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黒25は力強い。白も26と応じて競り合いに発展した。

 

黒27のノビに対しては警戒が必要。黒Aから黒Eの出切りには白28の切りで撃退できるが、黒は白の形の不備をつく手筋を隠し持っている。

 

例えば3図の白1とそっぽを向くと、黒2のコスミツケで敗色濃厚に。形は白3にノビ切るほかないが、黒4、6のワリツギが強手。黒a のウッテガエシと黒bの切りが生じる。

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清成は白28、30と補強。黒31 に白32は譲れないところだ。ここを裂いておけば左上と左辺の両方の黒への攻めが狙える。

 

黒は33から左上一団の脱出を図る。白はもう一つの標的を4図の白1から7と追及したいがすぐには無理。黒a 、白b、黒c で、黒dのワリ込みと黒e が見合いだ。そこで白は36から強引に左上黒を閉じ込めにいった。左辺黒へどんな手段があるか。これがこのあと、問題になってくる。

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※続きはテキストでお楽しみください。

※段位・タイトルは放送当時のものです。

 

■『NHK囲碁講座』2021年8月号より

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