趣味

千田翔太七段、永世名人の棋譜から学んだ奨励会時代


2021.05.23

撮影:河井邦彦

プロ棋士の強さの秘密を知りたい。どんな方法で強くなったのか。どうしてその方法を選んだのか。そしてなにを目指して、どこまで強くなろうとしているのか。新連載「わが道をゆく〜強くなるためのメソッド〜」第1回は千田翔太(ちだ・しょうた)七段が登場します。

 

文/高野悟志

 

*  *  *

 

連載第1回にご登場いただくのは千田翔太七段。AIを将棋の研究に取り入れた先駆者的存在である。

 

駒落ちの多い教室で育つ

 

5歳で将棋を覚え、翌年には指導棋士の川崎一克五段が主宰する「川崎こども将棋教室」へ通い始めた。川崎五段は森信雄七段門下で、後に兄弟子となる。教室では主に実戦と詰将棋で腕を磨いた。そして棋譜並べもしていたというから、スタンダードな勉強法ばかりだ。

 

「初段になるためには川崎さんとの対局試験があって、本気の四枚落ちで勝てば初段。私は2002年くらいに初段になりました。生徒同士だと、三段になったころから駒落ちでの対局が増えました。上手を持つことが多くて、苦しい状況での粘りや、相手を間違えさせる技術を学んだ。上手を持つことは嫌ではなく慣れっこで、当たり前に指していました」

 

奨励会試験は2005年に1次試験で敗退。翌年に6級で合格した。奨励会時代は、同期の池永天志四段、石川優太四段らとよく練習将棋を指したという。一門の研究会では兄弟子たちに鍛えられた。

 

このあたりまでは、一般的な勉強法に終始しているように感じたが、詰将棋への取り組みには特徴があった。

 

「解いた後にすぐ次の問題にいくのではなく、この形は持ち駒が変わったらどうなるか、駒の配置がちょっとずれたらどうなるかとか、常に考えていました」

 

現在26歳の千田にとって、ネット将棋の「将棋倶楽部24」は修業時代から身近な存在だった。奨励会のころは一日中やっているような日もあったというが、やみくもに局数をこなすというわけではなかった。「対局が終わると、どこが悪かったか、一人で延々と感想戦をやっていた」と当時を振り返る。

 

永世名人の棋譜から学ぶ

 

奨励会は順調なペースで昇級、昇段を重ね、入会から3年半ほどで三段に。そして三段リーグも常に勝ち越していたが、昇段にはなかなか届かなかった。そこで勉強法を見直すことにした。

 

「三段になった時は、コンピューターの強さは知っていました。ソフト同士が対戦するサイトでは、私と同じくらいの強さのソフトが、一番上のソフトとは500点や600点も離れていて、自分より圧倒的に強いことを思い知らされた」

 

しかし、ここですぐソフトを使った研究に取り組んだわけではなかった。

 

「まだそこまで頭が回らなかったです。自分よりは強いが、人間のトップと比べてどのくらい強いのかは分かっていなかった」という。そこで勉強材料として、木村義雄十四世名人以降の永世名人の将棋を取り上げることにした。特に大山康晴十五世名人と中原誠十六世名人の棋譜をたくさん並べた。

 

「『将棋倶楽部24』ではトップクラスのレーティングに達していたが、三段リーグは5割程度。10勝8敗くらいの成績が続いて伸び悩んでいた。内容の出来不出来に差があったので、取りこぼしを減らしたいと考えました。永世名人は皆、将棋が手厚い。大山先生は、昔の居飛車の棋譜を。当時の相居飛車は序盤がじっくりした将棋で、相手の攻めが直撃しない指し方とかを学んだ。中原先生は対振り飛車戦で大山先生にどう勝つか。負けにくい将棋の作りや、駒をきれいにさばきつつ、厚みのある将棋を勉強した。永世名人の指し手が正しいという前提で棋譜を並べて、特長を実戦に応用しました」

 

※続きはテキストでお楽しみください。

※肩書はテキスト掲載当時のものです。

 

■『NHK将棋講座』連載「わが道をゆく〜強くなるためのメソッド〜」2021年4月号より

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