趣味

平成の女流棋界を牽引した清水市代女流七段


2021.04.13

写真:河井邦彦

平成の将棋界はどのように動いてきたのか。平成の将棋界をどうやって戦ってきたのか。勝負の記憶は棋士の数だけ刻み込まれてきた。連載「平成の勝負師たち」最終回に登場するのは清水市代(しみず・いちよ)女流七段だ。

 

*  *  *

 

初戴冠(たいかん)となった女流名人の肩書で平成を迎えた。新時代に突入してから成績は右肩上がりに急上昇する。数々の記録を塗り替えていく。通算タイトル獲得43期、年度対局数・勝数(55局40勝=平成23年度)、年度最高勝率26勝3敗・勝率8割9分7厘(平成5年度)など、挙げたらキリがない。平成の女流棋界はまさに清水の独壇場だった。

 

「平成は女流棋界初と言っていただいた記録や成績がたくさんあって。道なき道をいつも突き進んでいる感じがあり、それが自分にとっての充実感でした」

 

しかし、記録面には無頓着だというのが実に面白い。こういったあたりは羽生善治九段と似ている。平成8年7月に当時四冠だった女流タイトルを独占。その5か月前に羽生七冠が誕生したこともあって「女羽生」と呼ばれた。

 

「通算勝数とか生涯勝率を聞かれても、まともに答えられたことがなくて。興味がないというと変ですが、意識していないのは事実です。数字はすべて過去のものであり、自分は常に前に進み続けている気持ちでいますから」

 

独自の感情と好奇心

 

女流棋界の第一人者として平成の女流棋界を牽引した。楽しかったことや苦しかったことを訪ねると、意外な言葉が返ってきた。

 

「あらためて考えてみたのですが、特に思いつかなくて。目の前のことをひとつひとつ取り組んで夢中で走ってきたら、今になったという感じです。両親のしつけが影響しているのか、小さいころから好奇心旺盛で、初めてのことにはすごく興味を示すタイプでした。喜怒哀楽を超越しているのか充実の毎日であって、つらいと感じたことが一度もないんです」

 

平成初期は奪取と失冠を繰り返したが、平成4年春に女流王将を獲得してから本領を発揮。18年もの長期に渡ってタイトルホルダーとして君臨した。成績が下降して無冠の危機が迫っても、女流棋界の中心は譲らなかった。

 

「スランプって自分で思ったことは一度もなくて。単に弱いだけで努力が足りていないだけだと自問自答しながら進んできました。スランプと言ってしまえば気が楽で、自分のせいじゃないよねと逃げることができます。でもそれが私はイヤで。勝てないのは自分の責任です」

 

対局中の近寄りがたいオーラは20代のころから少しも変わらない。しかし、本人はいたって平常心であり、あえて感情を出さないようにしていると言う。

 

「対局中の私って怖いんだ(苦笑)。常に無意識なんですけどね。苦しいとかイヤだなぁと思うのは自分でコントロールできる感情であって、出すと自分を縛ってしまいますから。例えば朝起きて雨が降っていたらイヤだなぁと感じる人もいるかもしれない。『雨だ。楽しいな、うれしいな』と思えるなら、その日が楽しく過ごせるというのが私の考え方でして。苦しいと思わないようにできれば、それも楽しさのひとつになるでしょう。清水家は昔からそんな雰囲気なんですよね」

 

※続きはテキストでお楽しみください。

※肩書はテキスト掲載当時のものです。

 

■『NHK将棋講座』2021年3月号より

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