趣味

タイトルホルダー最後の砦、永瀬拓矢王座vs.木村一基九段


2021.04.21

左/永瀬拓矢王座、右/木村一基九段 撮影:河井邦彦

第70回NHK杯3回戦第8局は、永瀬拓矢(ながせ・たくや)王座と木村一基(きむら・かずき)九段の対局となった。内田晶さんの観戦記から、序盤の展開を紹介する。

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*  *  *

 

最後の砦

 

本局は3回戦の最終カード。渡辺明名人、豊島将之竜王、藤井聡太二冠らトップ棋士の名前がトーナメント表からすでに消えていることに驚く。本局は王座を保持する永瀬がタイトルホルダー最後の砦(とりで)として登場した。

 

振り駒で永瀬が先手に。これまで先後への意識がそこまで高くなかったそうだが、今期は番勝負を重ねたことで先手番の重要性を実感したそうだ。そんな永瀬が目指したのは矢倉だった。

 

最近の先手矢倉は後手の急戦策を警戒しながら、仕掛けの糸口を探っていく指し方が主流になっている。先手もスキあらば早い戦いを挑むようになった。互いに5筋の歩を突くタイミングをうかがっているのも特徴だ。

 

永瀬の駒組みがそれを表している。右桂を跳ねて▲4七銀と組んだのがそれ。後手が△5四歩と突いてくれば、▲6六銀と上がって▲5五歩△同歩▲4五歩の仕掛けが生じる。

 

したがって木村は5筋の歩を突かない。素早く右銀を繰り出して2図まで進み、満足の展開だと見ていた。先手に仕掛けを与えず、後手から△7五歩と動ける形を作ったからである。

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水面下の重要な変化

 

永瀬は第68期王座戦で初防衛を果たした。3期目のタイトル獲得となり九段に昇段。局後の取材では触れられず、翌朝に感想を聞くと「大変名誉なことではありますが、特に意識はしていません。私は肩書で将棋の内容が変わるタイプではありませんので」との答え。勝負への貪欲さは少しも変わらない。

 

2図から▲7九角~▲5七角に対して、木村は銀交換を目指す。駒台に銀をのせて好調のようだが、様子がおかしい。▲8三銀を防ぐために△7四銀と打つようでは、後手の攻めが成功したとは言い難い。

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木村は▲2九飛に対して△4二角(3図)と上がった。△7五歩といければ7四に打った銀の顔が立つ。▲7五同歩に△8四飛と攻める意味。だが、強く▲7四歩と銀を取られて、△8九飛成▲7九金△9九竜▲8八銀△9六竜に▲8五銀で「自信が持てない」と木村は言う。

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△4二角は矢倉に入城して方針を練り直す意味だが、△6四角と上がって、△7三角~△8四角を狙うべきだった。

 

永瀬は3図から▲5九玉~▲4八玉と陣形を整備したが、ここは▲4五歩と先攻するチャンスだった。以下△4五同歩▲同桂△4四銀▲2四歩△同歩▲同角△同角▲同飛△2三歩▲2七飛と進む。先手は▲6一角と打って▲4三角成△同金▲2三飛成の狙いが残る。永瀬は玉に費やした2手を「損になるとは…。甘かったですね」と反省する。

 

だが、実際に形勢を損ねる要因となったのは、4図からの組み立てだったのである。

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※投了までの棋譜と観戦記はテキストに掲載しています。

※肩書はテキスト掲載当時のものです。

 

■『NHK将棋講座』2021年3月号より

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