趣味

一力遼碁聖の自戦解説


2021.03.06

左/沼舘沙輝哉六段、右/一力遼碁聖(放送時) 撮影:小松士郎

第68回NHK杯2回戦第15局は【黒】沼舘沙輝哉(ぬまだて・さきや)六段と【白】一力遼(いちりき・りょう)碁聖(放送時)の対局となった。一力碁聖の自戦解説から序盤の展開を紹介する。

 

*  *  *

 

よみがえる記憶

 

今期のNHK杯はこの2回戦第15局が初対局です。第16局は1回戦から勝ち上がりの二人(大西竜平七段と藤沢里菜女流本因坊)ですから、全参加棋士の中で最も遅い登場となりました。テレビ越しにソーシャルディスタンスの対局場を見ていましたが、リハーサルで実際に試し打ちをしてみると、やはり想像とちょっと違いました。

 

本局に臨むにあたっては、ふだんと変わりなく…と言いたいところですが、実は少し悪い記憶がよみがえりました。NHK杯初出場の第62回で準優勝した翌年の第63回では、2回戦で寺山怜六段に半目負け。第64回で準優勝した翌年の第65回では、3回戦で本木克弥八段に半目負け。つまり「準優勝の翌年」に「藤澤一就門下」に「半目負け」しているのです。前期は準優勝、沼舘六段も藤澤先生の門下生と、条件は整っています。自分で気が付いてしまったので、しかたがないのですが…。

 

独創的な布石

 

黒7は沼舘六段らしい独創的な手。白8と周辺から動いてみました。白14に対する黒15も予想外の手でしたが、白30までいい勝負だと思います。私としては白8、10の二子をどうにか活用したいと考えていました。白32から38まで治まりましたが、黒39から47まで中央志向で一局ですね。白48から殴り込みです。

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サバキに手応え

 

黒49は白の応対を打診する様子見の一着です。しかし、手を抜いても大きな損害が及ぶわけではないので、白50、52と右辺の補強に回れました。沼舘六段は黒49を少し後悔したそうです。

 

放置していた上辺白に、黒55と食らいついてきました。これに対しては白56と右上に活路を求めるのが予定の行動。黒59と切られると危険だと思われる方が多いと思います。このような黒の勢力圏では、全ての石を助けようと考えずに、トカゲのしっぽ切りのように一部を捨てて、本体を逃げてしまうフリカワリ作戦が有力です。黒63まで白六子は飲み込まれますが、白も64まで右上を白地化して、カラいと見ていました。また、飲み込まれた白六子はまだ活力が残されています。

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黒65と右辺白の進路を止めプレッシャーをかけてきますが、そちらも手抜きして今度は白66と上辺へ向かいます。飲み込まれた白の活力が途絶える前に、早く活用しようという思いがありました。黒67、69と打たれ、これで完全に息絶えましたが、白66、68が左上の白のサバキに大いに役立ちます。白70から直接動き出し、この石は取られないという感覚はありました。

 

沼舘六段は、黒77、79と白を小さく生かし、地合いのバランスを取る作戦にいきました。実戦は白80から84と左辺で生きる展開を選びましたが、ここは少し反省があります。白82では、1図、白1、3を交換して白5と打てば完全に生きることができ、憂いなく戦うことができました。この図はもちろん脳裏に思い浮かばなかったわけではありません。
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実戦の進行であれば、一例を挙げれば白Aから符号順に白Eまで、黒の包囲網を突破するような手段が狙えるので、のちに含みを持たせたかったのです。しかし、白も完全に生きていないということは、黒からもこの周辺にはさまざまな狙いや利き筋があるということ―右辺に弱い石を抱えている身では、簡明を目指すべきだったかもしれません。ただ、ここまで後悔する手はありませんでした。

 

※終局までの棋譜と観戦記はテキストに掲載しています。

※段位・タイトルは放送当時のものです。

 

■『NHK囲碁講座』2021年2月号より

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