趣味

最も集中して打った一局で「ゾーン」を体験した山城九段


2013.03.04

山城宏九段
写真:小松士郎

「僕は精神的には本当に駄目なんです。自分の精神的な弱さに、これまでどれだけ情けない思いをしてきたことか…」

 

こう語る山城宏九段は、手痛い敗戦をきっかけに「雑事を忘れて盤上に集中しよう」と決意。その結果、スポーツ選手が言う「ゾーンに入った」とも言える状態を体験したという。

 

*  *  *

 

2009年のことです。僕は当時、棋士会長の職務に追われていて、しかもいろいろなゴタゴタがあったため、なかなか盤上に集中できない日々をおくっていました。

 

そうしたらその年の暮れに、棋士になって初めて、午前中でツブレて負けてしまったのです。80手くらいで…。ショックでしたし、みっともなくて恥ずかしい…。さすがに「これはイカンな…」と思い、それで「せめて対局の時くらいは雑事を忘れ、盤上に集中しよう」と、自分に言い聞かせました。

 

そう思って年が明け、最初の対局が趙治勲先生との対戦でした。そしてこの碁が、これまでの棋士人生の中で「最も集中して打てた一局」となったのです。

 

まったく余計なことを考えなくて、まっさらな状態 —— 盤上だけにすべての照準が合っている感覚でした。局後に「ああ、こういう状態が一番いいんだな」と振り返ったものです。スポーツ選手が「ゾーンに入った」という言葉を使うことがありますが、これがそうだったのではないでしょうか。

 

もちろん対局中は、何も感じていないんですよ。終わってみて「あれ、ずいぶん集中して打てていたな」と、不思議な感覚に包まれたということです。

 

こういう感覚で碁を打ったのはこの一回だけですが、相手が趙先生だったというのが幸いしたのではないでしょうか。「負けてもともと。胸を借りるだけ」と思わせてくれる先生ですから。

 

そしてこの後、棋聖戦でリーグ入りすることができ、そのリーグ戦も四連勝で最終戦を迎えることができるなど、年明けからずっと好調が続いていました。

 

ところが「勝てばリーグ優勝」という井山裕太さんとの碁で、一時は優勢になりながら逆転負け…。また「これに勝てば——」との思いが湧き起こってしまったのです。

 

というわけで、結論としてはやっぱり、僕は精神的には駄目ということ。今後、この点を少しでも改善して、またタイトル戦の舞台に立ちたいと思っています。

 

■『NHK 囲碁講座』2013年2月号より

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