趣味

趙治勲二十五世本因坊が王立誠九段を“嫌いになった”ワケ


2014.09.15

イラスト:cus³

趙治勲(ちょう・ちくん)二十五世本因坊が『NHK囲碁講座』で好評連載中の「二十五世本因坊治勲のちょっといい碁の話」。軽妙洒脱な語り口で綴られる大物棋士たちとの意外なエピソードが人気を博している。今月は王立誠(おう・りっせい)九段を“大嫌いになった”というお話。

 

*  *  *

 

今月は王立誠九段への恨みつらみを聞いてください。タイトルを持っていたころだから、もうずいぶん前のことです。あるタイトル戦で地方へ出かけました。到着後、リラックスしていたらとんでもない情報が飛び込んできた。なんと、あの吉原由香里さんと立誠さんがプールで一緒に泳いでいるっていうじゃないですか! ぼくもすぐに行けばよかったんだけど水着がない。だから買いに行っちゃった。あとから聞いた話では水着は借りられたそうです。

 

水着を買ってから行ったらもう誰もいない。プールの監視員に聞きました。ここにとても美しい女性が来ませんでしたかって。そしたら、「仲のいい御夫婦? 恋人? 少し前までいましたよ」って…。もう頭にきてね。「彼女はしかたなく来ていただけだあああ!」って怒鳴っちゃった(笑)。

 

ショックですよ、水着も買っちゃったし。だから一人で泳いでいたんだけど誰も来ない。そこで、監視員さんに伝言をお願いしました。「ぼくは碁の大会で来ているんだけど、○○号室に関係者が大勢いるから、それとなく伝えてくれませんか? ヒゲ面の男が一人でさみしく泳いでいるって」

 

誰も来てくれませんでした。こうなると引っ込みがつかなくてね、ずっと泳いでいましたよ。かわいそうでしょ、ぼく。

 

当然、次の日の対局は負けました。インタビューで勝った立誠さんはこう答えました。「ぐっすり眠れたのが勝因ですね。昨日少し泳いで、程よく疲れたのがよかったと思います」。ぼくはこう。「昨日、泳ぎ過ぎちゃって。これが敗因です。疲れ過ぎると夜も眠れなくなるんですね」

 

この日を境に、立誠さんが大嫌いになりました。さらにプールの恨みは増幅していきます。会うたびにこうあいさつをしてきて、あの悪夢を思い出させるのです。「チクンさん、泳いでますか」とね。「健康のために一人で黙々と泳いでいる」と皮肉交じりに答えても気付きやしない。「水泳って一人で楽しむものじゃないですよ」だって。恨み骨髄に徹すとはこのことですよ。

 

ところが最近、立誠さんのあいさつが変わりました。ぼくが連載しているある記事について、「面白いです」と言ってきた。さらに「家族みんなでファンです」って言うんだ。奥さんはものすごい美人。これでドキッときちゃってね。そして娘さん(景怡二段)も、彼にそっくりなんだけど、これまた間違いなく美人なんです!

 

ぼくは立誠さんを許しました。奥さんと娘さんが美人なので。ぼくがこんなに深く恨んでいたとは知らないだろうな…。

 

■『NHK囲碁講座』2014年9月号より

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