趣味

戦後のクリスマスをうたった短歌


2013.12.05

街に華やかなクリスマスの装飾があふれる12月。短歌の世界ではクリスマスはどううたわれてきたのだろう。「未来」選者の佐伯裕子(さえき・ゆうこ)さんが、映像的な例歌を紹介する。

 

*  *  *

 

キリシタンの弾圧を繰り返していた日本が、正式にキリスト教を解禁したのは明治6(1873)年のことでした。長く親しんできた陰暦を西欧の太陽暦に変えたのは明治5年、樋口一葉の生まれた年です。その少し前の明治2年に、キリスト教伝播の元凶として、思想家の横井小楠(しょうなん)が暗殺されていますので、開国による欧化政策の速度の凄まじさが想像されます。いまからほんの140年ほど前のことでした。

ひるがえって昭和の半ば、高度成長期にあたるころを思い出すと、とりわけクリスマスの夜の街の華やかさが甦ってきます。

 

例歌を探してみると、クリスマスパーティを楽しむ歌は少なく、信仰に関わる思いや、クリスマスで賑わう街のスケッチが多くうたわれています。ことに戦後の一時期は、どこか貧しい「マッチ売りの少女」を思わせる歌が特色となっています。アメリカの占領下にあった影響もあり、憧憬と批判のないまぜになった視線が読み取れるでしょう。

 

クリスマス・ツリーを飾る灯の窓を旅びとのごとく見てとほるなり

大野誠夫『薔薇祭』

 

樅(もみ)の木の灯の明滅をめぐりつつ人は踊れり窓の内側

同『山鴫』

 

戦後の荒廃した時代、昭和26(1951)年に出版された歌集『薔薇祭』。さらに年を経て日本が活気をもちはじめた1965年刊行の『山鴫』。時代が大きく変わっているのに、どちらも同じ心境のうかがえるクリスマスの歌になっています。作者は、終戦直後の荒廃した都市風俗をドラマチックに描いた歌人です。画家志望で映画好きだったせいか、歌は映像的に演出されています。一首目「クリスマス・ツリーを飾る灯の窓」は、戦争直後を考えると普通の家庭とは思えません。「旅びとのごとく」という隔たった孤独感が強調されています。次の「樅の木の灯の明滅」の周りでダンスをする人々も、作者から遠い幸福な存在として描かれています。街を行く人々の多くは貧しく、二つの「窓の内側」は、都市風景のなかの豊かな幸福を象徴しており、貧しいものを幸いとするキリスト教の信仰そのものには触れていません。

 

■『NHK短歌』2013年12月号より

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