教養

歳月を共有する相棒 ペットを詠う


2021.10.11

「塔」編集委員の大森静佳(おおもり・しずか)さんの講座「今読みたい愛の歌」。10月号では、ペットを詠んだ歌を紹介します。

 

*  *  *

 

山育ちで、とくに弟たちは生きものが大好きだったので、子どもの頃は本当にいろいろな動物に囲まれて暮らしていました。拾ってきた犬が四頭、猫、うさぎ、リクガメ、蛇、ベルツノガエル、ザリガニ、たくさんの魚たち。長く一緒に過ごすうちに、本当の友だちのように慕わしくあたたかい存在になってきますよね。そして、人間よりも寿命が短い彼らは、まだ幼かった私たちにつくづくと死を見せてからこの世を去っていきました。つらい経験ではあるけれど、庭や裏山に動物たちのお墓をいくつも掘った思い出は、忘れがたいものとなっています。今月は、さまざまなペットを詠んだ歌を見ていきましょう。

 

猫じやらしにつよく反応せし頃のきみをおもへり十年が過ぐ

小池光(こいけ・ひかる)『山鳩集』

 

今ではすっかり老猫になってのんびりとしか動かない「きみ」。猫じゃらしに元気よく反応していた十年前の姿を、作者は懐かしく思い出しているのでしょう。「きみ」という呼び方が自然に出てくる、相棒同士のような関係がうかがえます。人間と猫とでは老いる速さが違うけれど、ともかくこの「きみ」と自分とに等しく十年の歳月が流れた。歳月を共有している。静かな老猫となった「きみ」への深い愛情が伝わってくる一首です。

 

あしもとに眠れる犬の夢のなかわがねむりたり犬のあしもとに

河野美砂子(こうの・みさこ)『ゼクエンツ』

 

飼い主の足元に寝そべり、安心しきって眠っている犬。その犬が見ている夢のなかでは、自分のほうが犬の足元で眠っている。犬と自分が入れ替わってしまうような不思議な歌ですが、犬の夢のなかで自分は仔犬のように小さな姿になっているのかもしれません。自分の夢ではなく「犬の夢」なのでもちろん想像ではありますが、どちらが犬でどちらが人でもかまわないような、対等でぬくぬくと安らいだ繋がりが背後に感じられます。

 

■『NHK短歌』2021年10月号より

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