教養

志を持ち、それを実現するには「自ら箸を取れ」


2021.05.02

現代の私たちが、渋沢のように志を持ち、それを実現していくためには、何が必要なのでしょうか。彼は、『論語と算盤』の中に、そのヒントとなる考え方をいくつか残しています。作家で中国古典研究家の守屋 淳(もりや・あつし)さんが、該当箇所を引いて紹介します。

 

*  *  *

 

まず、志を実現するには、自分で道を切り開いていくやる気と気概がなければ始まりません。いくら優秀な人間でも、やる気を持って自ら動き出さなければ、何も成し遂げられない。そのことを渋沢は、「自ら箸を取れ」という表現で若い世代に訴えています。

 

青年たちのなかには、大いに仕事がしたいのに、頼れる人がいないとか、応援してくれる人がいない、見てくれる人がいないと嘆く者がいる。

 

なるほど、どんなに優秀な人でも、その才能や気概、胆力や智謀を見出す先輩や、環境がないと、その手腕を発揮するきっかけがなかなか掴(つか)めない。そこで、有力な先輩を知り合いに持つとか、親類に有力な人がいるという青年は、その器量を認められる機会も多いので、比較的恵まれているといえるだろう。

 

しかし、それは普通以下の人の話で、もしその人に手腕があり、優れた頭脳があれば、たとえ若いうちから有力な知り合いや親類がいなくても、世間が放っておくものではない。もともと今の世の中には人が多い。官庁にも、会社にも、銀行にも、人がたくさん余っているくらいだ。しかし、上の人間が「これなら大丈夫」と安心して任せられる人物は少ない。だからどこにおいても、優良な人物ならば、いくらでも欲しがっている。こうして人材登用のお膳立てをして、われわれは待っているのだが、この用意を食べるかどうかは箸を取る人の気持ち次第でしかない。ご馳走の献立をつくったうえに、それを口に運んでやるほど先輩や世の中はヒマではないのだ。

 

社会や企業は、いつでも優秀な人材を欲している。しかし、だからといって何から何までお膳立てしてあげるほど優しくはない。これは、現代でも同じことが言えるのではないでしょうか。

 

■『NHK100分de名著 渋沢栄一 論語と算盤』より

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