4つに大別できる「ほとけさま」その役割とは
悟りをひらいたほとけさまである「如来」、修行中ではあるけれど、如来の世界と私たち衆生のいる世界の架け橋になってくださる「菩薩」、如来の化身ともいわれ、怖い顔で仏教世界に敵対するものを叱り諭す「明王」、この世界全体をまもってくれる「天」。このように、ほとけさまの役割は4つに大別できるという。東京藝術大学大学院教授(文化財保存学)の籔内佐斗司(やぶうち・さとし)さんに、それぞれのほとけさまについて詳しく教えていただいた。
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【如来(にょらい)】
最上部にある仏界でもっとも尊いとされるのが如来です。如来とは、「悟りをひらいた者=仏陀(ぶっだ)」をさし、本来は仏教を開いたお釈迦さまのお姿を映したものでした。のちに大乗仏教では、お釈迦さま以外の仏陀も如来としてまつられるようになります。釈迦如来のほかに、大日如来や阿弥陀如来、薬師如来、毘盧遮那如来などいろいろな如来があるのはこのためです。
【菩薩(ぼさつ)】
「悟りを求めて精進しながら、人々を救うための行い(菩薩行)をし、衆生を救済する者」として、出家する前のお釈迦さまのお姿を表すものでした。きらびやかに装っているのは、お釈迦さまがまだ王子の身分にあったころのお姿だからです。大乗仏教では、菩薩もより広い意味でとらえられ、お釈迦さま以外の菩薩もたくさん考え出されました。
【明王(みょうおう)】
明王は真言宗や天台宗など、密教で説かれるほとけさまで、ルーツをたどればもともとはヒンドゥー教の神さまでした。その多くは忿怒(ふんぬ)の形相で武器を持ち、火炎に包まれており、そのたけだけしい姿のモデルは、武勇に優れていたといわれる王子のころのお釈迦さまと考えられています。
【天(てん)】
梵天(ぼんてん)、帝釈天(たいしゃくてん)など、その名に「天」とつくほとけさまの多くは、バラモン教の神々に由来します。お釈迦さまから数百年後の大乗仏教の時代に仏教に取り込まれ、仏法に帰依(きえ)して護法善神になったととらえられています。
四天王に仕える八部衆も、古代インドの鬼神などに源をたどることができます。四天王の足元には、仏法の敵である邪鬼の姿が、しばしば踏み敷かれる姿で表されています。
■『NHK趣味Do楽 籔内佐斗司流 仏像拝観手引 日本列島巡礼編』より