仏像はなぜ光り輝いているの?
ほとけさまの姿を表した像である仏像はなぜ光り輝いているのだろうか。それには人類の持つ「遺伝子」に関係が深いと東京藝術大学大学院教授(文化財保存学)の籔内佐斗司(やぶうち・さとし)さんは解説する。
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仏像とは、仏教の教えを説くため、ほとけさまの姿を表した像のことです。多くのほとけさまは、なぜ光り輝いているのか? お不動さまのように怖い顔をしたほとけさまは、なぜ炎を背負っていらっしゃるのか、考えてみたことはありますか?
ほとけの世界観を考えるうえで、これはとても重要な手がかりです。
人類の遠いご先祖は、昼行性の小動物だったと考えられています。明るい間に活動し、夜は夜行性の恐ろしい動物たちに襲われないよう、息を潜めて夜明けを待っていました。そして、人類へと進化し、火を手に入れてからも、夜の闇を恐れ、夜明けの光を待ち望む記憶を遺伝子のなかに持ち続けてきました。
その記憶が宗教に反映されていても不思議ではありません。光は善なるもの、闇は悪(あ)しきもの。こうして光の恩恵をもたらす太陽と火への信仰が生まれ、闇を魔物のすむ世界と考えるようになったのです。
光に包まれ、慈悲あふれる優しい表情のほとけさまは、人を善なるものへと導くお姿。そして、恐ろしい形相は、炎をもって悪しきものをこらしめ、追い払う戦いの姿なのです。
■『NHK趣味Do楽 籔内佐斗司流 仏像拝観手引 日本列島巡礼編』より