ゲームにゆれる心を詠む


2016.01.24

『NHK短歌』テキストの連載「心の動きをうたう」では、「塔」選者の栗木京子さんが、心のゆれが詠まれた短歌を紹介しています。1月号のテーマは「変わりゆくゲーム」。ゲームはそのあり方も遊ぶ人の姿も、昭和の頃と比べて様変わりしました。かつての子供がゲームに対し抱いていた憧憬の念を詠んだ、微笑ましい歌をお楽しみください。

 

*  *  *

 

学生時代には、夏は海に冬は雪山にと友人たちとよく旅行をしました。そんなとき、往復の乗り物の中ではたいていトランプをして過ごしたものです。宿泊先の部屋でも夜更けまでトランプに興じていたことを思い出します。

 

けれども、最近は乗り物でトランプをしている若者を見ることは、まずありません。仲間同士で近い席に座っていても誰もがそれぞれにスマートフォンに見入っています。機器の出現と進化によってゲームの形態が大きく変わったことに、あらためて気付かされます。

 

ファミコンはいつ買つてくれるかと電話にておもひつめたる声で言ひけり

小池 光『日々の思い出』

 

歌集『日々の思い出』の歌にはすべて日付が添えられています。この歌は昭和六十二年一月六日に詠まれたもの。「子供より電話あり」という詞書(ことばがき)が付いています。一月初旬に詠まれた他の歌から推察すると、作者の幼い二人の子は元日から母方の祖父母宅に遊びに行っていたようです。

 

ファミコンはファミリーコンピュータの略称。テレビゲーム用の家庭向けコンピュータです。発売されたのは昭和五十八年でしたから、作者の子は買ってもらうのを数年間も待っていたことになります。父親に直接おねだりするのではなく、祖父母の家から電話で、しかも「おもひつめたる声」で問い掛けてきたところが愛しく感じられます。

 

■『NHK短歌』2016年1月号より

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