暮らし

火山灰ニモ負ケズ……絹さや&さやいんげんの産地を訪ねて


2020.04.24

大隈半島北西に位置する垂水(たるみず)市は、桜島と地続きで、時折起きる噴火のたびに、ハウスの屋根に火山灰が降り積もる。撮影:田渕睦深

豆は、春らしい食材の代表格。さやの中にちんまりと行儀よく並ぶ様は、どこかユーモラスで微笑みを誘います。温暖な気候を生かして絹さやとさやいんげんを栽培し、日本全国へ送り届けている鹿児島県を訪ねました。

 

*  *  *

 

スイートピーのような花が満開

 

鹿児島県垂水(たるみず)市では、その温暖な気候を利用して、9月から翌年6月までの長期間、絹さややさやいんげんなど、さや豆(さやを食する豆類)の栽培が行われています。1月末、海の向こうに桜島を望む、水迫宏一さんのハウスを訪ました。

 

中に入ると、通路の両側にスイートピーに似た真っ白な花が満開で、足元に花びらが雪のように落ちています。「これが白花の絹さや。赤花の品種もありますよ」。花びらが落ちると、小さなめしべが膨らんで、鮮やかなグリーンの絹さやに。日にかざすと小さな豆のシルエットが透けて見えるぐらいになったら、ひとさやずつ手で摘み取っていきます。

 

水迫さんは、地元でとれた農産物を扱う商社の三代目として、鹿児島のさや豆を全国へ向けて販売していました。ところが今から15年前、農家の高齢化が進んでいく様を目の当たりにします。「せっかくさや豆にぴったりの産地なのに、このまま衰退させてしまっては、もったいない」と奮起しました。ベテランの農家を雇い入れ、手が足りない分は外国人の実習生の手も借りて、自ら栽培をスタート。何十棟も並ぶハウスや畑を、行き来しています。

換気が勝負のさやいんげん

 

かつてさや豆の収穫は、露地栽培が可能な春と秋に限られていましたが、今は膝丈のトンネル、無加温・加温ハウスなど、さまざまな資材と技術、新品種を駆使して、長期間栽培できるようになりました。十数年前から、さやが厚く甘みの強いスナップえんどうも加わって、その「軽くて高単価」な特徴を生かし、関西や関東の消費地へ送り届けています。

 

続いて、さやいんげんのハウスへ。春になり気温が上昇すると、室内はサウナのような状態になります。ハウスの天窓を手動のレバーで開けて風を通さないと、中が蒸れて病気が出てしまいます。コンピュータ制御で自動的に開閉する装置もあるのですが、ここではそれが使えません。

 

その理由は火山灰。桜島が噴火すると、南西の風に乗り、地元で「どか灰」と呼ばれる火山灰が、畑やハウスに積もります。雪と違って融けないので、屋根に登って小さなスコップで取り除く。そんな作業も欠かせません。

 

「屋根に積もったとき、開閉に失敗するとハウスが壊れてしまうんです。だから車に助手を乗せて、ハウスを回って『開けろー!』と。さやいんげんは、換気が勝負です」。

 

さや豆料理は晩酌のお供

 

作業を終え、自宅に帰った水迫さんの楽しみは、シャワーの後の晩酌。焼酎とハイボールが大好きで、妻の志貴子さんがつくる手料理が晩酌のお供です。オリーブオイルでサッと炒めた絹さやに卵を絡めた「卵とじ」は、5分でできるスピード料理。地元でとれた赤えびやたまねぎを合わせたかき揚げも好物です。素揚げしたさやいんげんのにんにくじょうゆ漬けは、ピリリと辛く、お酒によく合うそう。

 

近年は、50年ぶりの竜巻に襲われたり、冬場に「まさかの氷点下」まで気温が下がり、凍害に見舞われたりするなど、予測のつかない事態も起きています。そのたびに畑を回り、スタッフを励まし、体制を立て直す水迫さん。ふだんは夜釣りに出かけるのが何よりの楽しみなのだとか。それは海と畑の近さを物語っています。時折降る火山灰に悩まされながらも、よそでは栽培できない時期にも栽培できるのは、錦江湾から吹き渡る暖かな海風のおかげ。水迫さんはこれを味方に、さや豆をつくり続けます。

 

■『NHK趣味どきっ! カラダ喜ぶ 春ベジらいふ 』より

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