暮らし

孫に受け継がれる「モノ作り」の精神


2013.05.12

2人が羽織っているストールも元子さんの手作り。「この色合わせ、いいよね」と話す砂原さんに、「ベージュっぽい色には、緑色も合うんだよ」と元子さん。 撮影:大森忠明

『すてきにハンドメイド』で撮影をお願いしているカメラマンさんに砂原文(すなはら・あや)さんという方がいる。彼女の撮る写真は繊細で柔らかい雰囲気があって、作品が持つ色彩を忠実に再現してくれる。砂原さん自身もマフラーやスカーフなど小物使いが上手で、いつもおしゃれ。

 

ある撮影の日、彼女がつけている手編みのストールがかわいくて、尋ねてみると実はお祖母さんが編んだものだとか。編集部は砂原さんのお祖母さんで今年93歳になる砂山元子(すなやま・もとこ)さんを訪ねた。

 

*  *  *

 

「今日着ているものは30年くらい前に編んだものです。今は安くいろいろ手に入るので、自分で作っていると言うと『ケチね』って言われるんですけど(笑)。やっぱり自分の手でこしらえたものがいちばんです」

 

元子さんが現在編んでいるのは、これから生まれてくるひ孫のためのケープ。出産を控えた砂原さんへのプレゼントです。ピンク系の段染めのモヘア糸は2人で相談して選んだそうです。

 

「お祖母ちゃんは色使いのセンスがいいんですよ」(砂原さん)

 

「ピンクっぽい色にはベージュを合わせるときれいなんですよ。だからこのケープは2つ糸を使って編んでます」(元子さん)

 

夢中になって編んでいるお祖母ちゃんに、その糸玉を持って話しかける孫。その様子は、とてもほほえましいものでした。

 

小さいころから手を動かすことが大好きだったという元子さん。

 

「縫うこと、編むこと、描くこと。何でも好きでした。学生時代はよくミシンで服を作ったりしていたものです」

 

結婚してからは家事や育児の合間にできる編み物をすることが増えていったという元子さん。家族だけでなくご近所の人のリクエストにも答えて、帽子、ミトン、ショールなどを編んでいたそうです。

 

「手仕事は好きでしたからね。全然苦になりませんでしたね」

 

元子さんの作品の色使いにどこか、砂原さんの写真に共通するものを感じて、お祖母さんからの影響について聞いてみました。

 

「子どものころは、お祖母ちゃんが贈ってくれた図鑑や絵本などを見て育ちました。お祖母ちゃんは感性が豊かな人なので、その影響はありますね」(砂原さん)

 

砂原さんが、成人してひとり暮らしを始めたときは、寂しくないようにと毎月元子さんから手紙が届いていたといいます。

「『手洗いとうがいはしっかり』とかそんなことが書かれているだけなんですけどね。必ず横に、水彩絵の具や色鉛筆で描かれた絵が添えられていたんです。カラフルな鳥や花とか。それがとてもきれいで。お祖母ちゃんの手紙のおかげで仕事も頑張れました」(砂原さん)

 

会社を辞めてカメラマンの仕事をしたいと悩んでいたときに、背中を押したのも元子さんでした。「自由にやりなさい」。お祖母さんの一言で、一歩前に出ることができたと話します。

 

「自分は仕事をしてみたかったけれど、できなかった。でもその分、子どもや孫、ひ孫の世代のためにできることはないかと考えるんです。今の人たちは女性でも仕事をしている人が多い。文にも頑張って仕事を続けてほしい。子どもは預かってあげるからね。私もかわいいひ孫と一緒にいたいし(笑)」(元子さん)

 

人が作るものには、必ずその人のバックグラウンドが出るもの。砂原さんの写真のかげには、こんなすてきなお祖母さんがいた、そう思わせる力強い言葉を聞けたのでした。

 

■  『NHKすてきにハンドメイド』2013年5月号より

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