暮らし

食卓はみんなでつくっていくもの コウケンテツさんの台所


2019.03.23

基本はすべて、隠す収納にしたいところだが、何もなさすぎると無機質でさびしくなる。そこで、素材を統一できるスプーン類などは、見せる収納にしてバランスをとった。また、鍋類はしまい込むと使いにくいため、オープン棚に並べている。撮影:安彦幸枝

料理研究家のコウケンテツさんは、1男2女の父として子育てにも奮闘する毎日を送っています。台所は、食べることの楽しさを共有する場所。子どもたちと料理することも多いというコウさんの台所にお邪魔しました。

 

*  *  *

 

大きな窓から光がさし込む気持ちのいい空間。「ここが家の中で、いちばん日当たりのいい場所なんです」と話すコウさんの台所は、料理の撮影をする仕事場であり、家族のセカンドリビングでもあります。

 

コウさんは5人家族。上から8歳、5歳、1歳の子どもたちと暮らす毎日は、とてもにぎやかです。妻は仕事のマネージャーで公私ともどものパートナー。タッグを組んで共働きをしてきましたが、3人目が生まれてからというもの、予定外の出来事に親としてますます鍛えられる日々を送っています。「昨日もいちばん下の娘に、食事中のごはんをひっくり返されまして……。いよいよ自我が芽生えてきたんですよね。ああ、またこれが始まるのかと思うとつらいです」

 

そんなとき、コウさんは自問自答します。料理研究家として、手づくりのごはんを推奨してきたこれまでの自分の言動が、誰かを苦しめていたのではないかと。「例えば、料理がそんなに得意でもなく、協力者もいない人が、仕事が終わって買い物をして、急いで家に帰り、せっかくつくった料理に文句まで言われたり、残されたりしたら、苦痛でしかありません。そんな状況の人に、プレッシャーをかけていたかもしれないと思うと、本当に申し訳ないです」

 

食べる、寝る、働く、休む、遊ぶ――。すべてが連動して暮らしは成り立ちます。コウさんにとって「食べる」は大切。でも、自分や家族がご機嫌でいられる範囲で料理をしていこうと、今は思っています。「片づけを終わらせるまでが、家庭料理。家での僕は片づけが命で、味は二の次です(笑)。ごはんを食べ終わってからも、子どもを風呂に入れたり、宿題をみたり、やることが多いし、一杯ぐらいは飲みたいし。だから料理中は、一品つくるごとに洗い物をすませ、食後の時間を確保したいと思っています」

 

料理から片づけまでをスムーズにするためには、バリエーションや品数を増やしすぎないほうがいいのだとか。「以前、ひとり暮らしの期間に好物のパスタ、サラダ、肉の献立をつくり続けていたんですが、むちゃくちゃ手際がよくなりました。パスタのゆで上がりと同時に、サラダもシャキッと、肉もこんがり焼き上がって、台所もきれいでしたから!」と、きっぱり。毎日同じものを続けるのもありと感じさせてくれるエピソードです。

 

料理は本来、人を笑顔にするもの。ここ数年、仕事で海外の食卓を訪ねているコウさんは、「食べる人」の意識が少し変われば、「料理をする人」の負担も減るのではと、考えているそうです。「ヨーロッパの人たちって、食べているものはピザとか、冷凍の肉を焼くとか、簡単で同じものばかり。でも、パパが会話で盛り上げてくれるから、食事の時間がすごく楽しいんです。食卓は、みんなでつくっていくものなんだなぁと思いました。日本でもそうやって盛り上げるだけで違うと思います」

 

子どもたちと料理をするのも、全員参加の一環。つくる人の気持ちがわかるようになってくれたなら、それだけでうれしいのです。

 

■『NHK 趣味どきっ! 人と暮らしと、台所 』より

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