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仏教の誕生から仏像の登場へ


2014.04.22

お釈迦さまは、菩提樹の下で瞑想しているときに、ぱっと道が開け、悟りを開いたとされる。イラスト:籔内佐斗司

仏教に不可欠な仏像はいつ頃、どのような経緯で作られることになったのでしょうか。東京藝術大学大学院教授(文化財保存学)の籔内佐斗司(やぶうち・さとし)さんが仏教の原点であるお釈迦さまの生涯をおさらいしながら解説します。

 

*  *  *

 

お釈迦さま(ゴータマ・シッダールタ)は、北インドのシャカ族の王子(クシャトリア階級)に生まれました。その生没年は、紀元前500年を前後するいくつかの説があって確定していませんが、ここでは、今からおおよそ2500年前の人、としておきます。

 

お釈迦さまは生後間もなく母を亡くしますが、クシャトリアとして立派に成長し、結婚もし、子どもももうけます。しかし、やがて「生・老・病・死」について真剣に悩むようになり、戦争に明け暮れるクシャトリア階級にも嫌気がさして、29歳のとき、地位や身分の一切を捨てて出家し、修行者になりました。お釈迦さまは想像を絶する苦行を6年間にわたって続けましたが、結果は苦行の空しさを悟ることで終わります。

 

一緒に修行した5人の修行者(五比丘〈ごびく〉)とも別れたお釈迦さまは、ガヤー村(のちのブッダガヤー)の菩提樹(ぼだいじゅ)の下で瞑想(めいそう)しているうちに、豁然(かつぜん)と悟りを開きました(小涅槃)。その後、鹿野苑(ろくやおん・サールナート)で別れた5人と再会、説法を授けたのをはじめとして、次々に著名な弟子たちを集め、インド各地を45年間にわたって仏法を説きつつ巡歴し、多くの供養者・檀那(だんな・支援者)を獲得しました。そしてついにクシナガラの娑羅双樹(さらそうじゅ)の間で入滅しましたが、これを大涅槃(だいねはん)といいます。

 

仏像はお釈迦さまの教えを表現したもの

 

今日、日本では仏像のない仏教は想像できませんが、お釈迦さまの像がつくられ始めたのは、紀元1世紀から2世紀ごろにかけてのことでした。インダス川沿いのガンダーラ(現在はパキスタン領ペシャワール)で、ほとんど同時にガンジス川上流のマトゥラー(インド)でもつくられるようになりました。

 

もともと最初期の仏教では、仏法(お釈迦さまが説いた法)を偶像化して表現するということはありませんでした。しかし釈迦入滅後、しだいにお釈迦さまの神格化が進み、大衆にも理解しやすいように、仏法を造形表現で説明するようになりました。

 

仏像は、お釈迦さまの舎利(しゃり)塔(遺骨を納めた塔。五重の塔の源流)の周りの浮き彫り(レリーフ)(サーンチーの仏塔基壇〈ぶっとうきだん〉)などから始まったと考えられています。それでも最初は、釈迦そのものを具象化することをタブーとしていました。しかし、紀元前300年代にアレクサンドロス大王の東征によってもたらされたギリシャ文明と、東方の文明の融合をヘレニズムといいますが、このヘレニズム時代を通じて、ギリシャ・ローマ文明の影響によって、たくさんの仏像がつくられる時代を迎えました。

 

以来、さまざまな如来や菩薩、天部像をどんどん加え、多様化していきます。ギリシャ人たちがインドや中央アジアの地を去ったあとも、ギリシャの造像技術は残り、インドやアフガニスタン、シルクロード各地、中国でもおびただしい仏像がつくられました。

 

日本で初めて本格的な仏像がつくられたのは606年、飛鳥大仏(あすかだいぶつ)だと考えられます。ガンダーラで仏像がつくられてから400年で日本に伝わったことになります。釈迦入滅後、500年以上も仏教がインド周辺地域を出なかったことを考えれば、仏像が生まれて200年余りしかたたない紀元460年代に、中国の雲崗石窟(うんこうせっくつ)で石仏が彫られ、その百数十年後に日本で飛鳥大仏が登場しているのは、たいへんな速さであったといえるでしょう。

 

■『NHK趣味Do楽 籔内佐斗司流 ほとけの履歴書 仏像のなぞを解きほぐす』より

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