趣味

棋士の勉強法とふだんの顔


2013.09.28

将棋棋士はふだん、どのように勉強しているのだろう。佐藤天彦七段が、対局場の外で棋士が見せる意外な素顔もあわせて紹介する。

 

*    *    *

 

棋士がふだんしている勉強法はいろいろとありますが、現在数多く行われている“研究会”、1対1の場合は“VS”(ブイエス)と呼ばれるものも、そんな勉強法の中のひとつです。

 

僕が最初に研究会という言葉を聞いたときは、開催に向けて各自課題を持ち寄って、「この形はどうなんでしょう」と会議にかけるような光景をイメージしました。しかしそんな想像とは違っていて、ほとんどの研究会やVSは実戦が中心です。

 

1対1で指すVSのメリットとしては、同じ相手と1日に数局指すことにより、互いにとって興味のある形を掘り下げやすい、というのがまず挙げられます。それに加え、2人のほうが日程を合わせるのも楽、という現実的な理由もあります。

 

4人や6人など、人数を集めて開催する研究会のメリットは、やはり一日に複数の人と指せる(研究会・VSは大体1日2、3局)というものでしょう。

 

VSは同じ人としかできませんが、研究会ならそれぞれ違う人のやり方(例えば居飛車・振り飛車などの戦法の違い)を経験することができます。また、中には特定の戦法の研究会(横歩取りの“8五飛研”等)もあり、その戦法に興味がある人にとっては重要なものになります。

 

そして個人的に感じるのは、研究会は人数が多い分、棋士の個性の数も増えているので、いろいろな考えを取り入れられるということです。同じプロなので、ある一定以上の部分からは似たような感覚を共有しているのですが、その線が微妙なものになってくると、人によって全然判断が違ってきたりするのです。ときにはあるひとつの局面で、3対1などで真っ向から形勢判断が分かれることも。こういうところをなあなあでは済まさないので、議論は白熱します。

 

例えば、一方が「まあ駒得だから」「この駒が遊んでいるから」「王様も堅いし」と説得に出ると、「(手順を)具体的にお願いします」と鋭く切り返されます。そうして意見を出し合っていると、相乗効果で面白い雰囲気が生まれてきます。

 

皆真剣にやってるのですが、そこは好きな将棋のことです。興が乗ってくると、軽口を交えたり、あえて変わった言い回しで言ってみたり、駄洒落(だじゃれ)を言ってみたり(無理筋なものが多いのですが)ものまね(のようなもの)をしてみたりと、各人各様の表現で場を盛り上げます。

 

棋士は、こういう言葉遊びが大好きです。もちろん、そんな中でもマイペースで局面を考えていることもありますし、そういうところもその人なりの性格がかいま見えて面白いのです。研究会に限らず、将棋連盟やタイトル戦の控え室などで日常的に見ることができるこうした検討風景が僕は好きです。

 

できれば、こうした部分もファンの皆さんにご覧に入れたいと思うほどなのですが、それはちょっと難しい話。

 

対局のときは真剣そのものの顔つきで盤に向かっている棋士たちが、皆で集まってわいわいと検討をしている様子を、ぜひ想像してみてくださいね。

 

■『NHK将棋講座』2013年9月号より

 

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