趣味

棋士と大学生の二重生活で困ったこととは


2013.09.18

大学へ行く棋士が増えている。しかし、大学に行くことは、将棋に費やせる時間が減ることにつながるはず。将棋の修行に直接役には立たないにもかかわらず、なぜ大学進学を選ぶのか? 観戦記者の松本哲平氏が、棋士と大学生という二重生活における難点を4人の棋士に聞いた。

 

取材したのは三段リーグ在籍中に早稲田大学社会科学部に出願した北浜健介八段、「東大生棋士」として話題になった片上大輔六段、2010年に王位を奪取し、初の大学生タイトルホルダーとなった広瀬章人七段(早稲田大学教育学部理学科)、そして大阪大学大学院文学研究科で博士前期課程に在籍する糸谷哲郎六段だ。

 

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棋士と大学生の二重生活を送るうえでの困難として、4人は「対局と講義・試験が重なること」を一様に挙げた。特に順位戦は対局日が期の始めに決まり、日程を動かすことができないためさまざまな苦労があったようだ。

 

北浜八段は次のように語る。

 

「講義を休むときに事務員の人に事情を説明したんですが、『将棋部の人ですか?』と聞かれて。違います、と答えたら『部活動じゃない人はちょっと……』と言われ、危うく追試を受けられないところでした。教授に説明するときも理解してもらえなくて、結局、対局通知を見せて追試を受けました」

 

棋士は特殊な職業ゆえに、一般の人に事情を汲んでもらうのは難しい。糸谷六段も語学の授業ではいろいろと苦労をしたそうだ。

 

「語学の講師でネイティブの方がいて、対局で出られない、ということを伝えるのは大変でした。そもそも将棋をよく知らない。説明しても『部活か?』と言われる。自分はプロプレイヤーである、お金を得ている、ということを説明するのに、英語が拙かったこともあり苦労しました」

 

また語学の授業は欠席に厳しいもの。1〜2年生のときは順位戦の翌日でも授業に出席し、試験と日程が重なったときには、東京から始発で帰ってそのまま試験を受けたこともあったという。

 

試験といえば、片上六段の在籍した東大法学部は「カンニングは退学」など、非常に試験が厳しいことで知られる。2005年に必修科目の追試を受けようとしたときは、当時の中原誠会長(十六世名人)に一筆書類を書いてもらい、なんとか許可を得たそうだ。

 

一方で、大学側の理解を多分に得られたのが広瀬七段。「ゼミの教授が将棋好きで、ゼミの最中に詰将棋を出されたこともあった。学友も数学好きだからか、将棋に興味のある人間が多かった」と話す。

 

■『NHK将棋講座』2013年9月号より

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