趣味

高学歴化する棋士たち


2013.09.11

棋士の大学進学者数と進学率を表した図。資料:学校基本調査(文部科学省)

将棋の実力だけがものをいうプロ棋士の世界。かつては高校に進学することさえ異端視されていた時期もあったが、いまや「大学生棋士」という肩書きもそう珍しいものではなくなってきている。観戦記者の松本哲平氏が、棋士の大学進学について考察する。

 

*    *    *

 

大学に行く棋士が増えた——。最近は棋士が将棋以外の分野からも注目を集めることが多くなっているが、大学もそのひとつ。昨年は中村太地六段が早稲田大学で政治を専攻していたことから、憲法学者の木村草太氏と対談が組まれたこともあった。

 

棋士と大学といえば「兄貴たちは頭が悪いから東大に行った」という米長邦雄永世棋聖の逸話が有名だ。棋士になれるのは年に数人、門の狭さは大学進学とは比べものにならない。今でこそ棋士は畏敬の対象だが、昔の社会的地位は決して高くなかった。学士棋士の第一号である加藤治郎名誉九段は、自著のなかで次のように記している。

 

(前略)棋界には大学などいっていて一人前の将棋指しになれるはずがないという考えが支配的だった。と同時に、一般社会の方にも、大学までいきながら何も将棋指しにならなくてもという空気があったのである。私の家族や親類にもプロ入りに反対する人が多く、米国に渡っていた叔母などは、「大学までいきながらなさけない」と嘆き悲しんだという。

———加藤治郎『昭和のコマおと』

 

加藤名誉九段は大学在学中にプロ入りを決意、つけ出し三段で奨励会に入会する。これが昭和8年(1933年)のこと。棋士が当時社会的にどう評価されていたかがよくわかる文章だ。なお、このすぐあとには先に触れた米長永世棋聖の逸話が紹介され、本が出版された昭和55年までの間に棋士の社会的評価が飛躍的に高まったとも書かれている。

 

現在の状況に話を移そう。加藤名誉九段以後、現在までに大学進学を経験した棋士は計28人になるのだが、それぞれ高校卒業と同じ年に進学したものとすると、このうち実に半数以上が1998年以降に集中している。数が小さいため確かなことは言えないが、ここ十数年で変化が起きていると考える材料にはなるだろう。これを国内全体の進学率と併記したものが図である。進学率はあくまで参考データだが、こうして見ると棋士間の進学者の増加は、社会全体の傾向に沿った変化と言うことができるかもしれない。

 

■  『NHK将棋講座』2013年9月号より

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