趣味

王銘琬九段「ゾーンプレス」の由来


2013.07.30

撮影:藤田浩司

2001年、若き挑戦者・張栩を4勝3敗で下して本因坊位を防衛した王銘琬九段。このシリーズを振り返って王は「僕のやり方が異質だったので、張栩さんが戸惑ったのでしょう」とのコメントを発している。

 

ではその「異質なやり方」とは、具体的にどういったものなのか? マスコミではよく「銘琬ワールド」とか「ゾーンプレス」という表現をされているが……。

 

あの「名人戦リーグ全敗」以降、現在に至るまで、王の着手に一貫して込められている哲学を語ってもらった。

 

*  *  *

 

打ちたいと思った手を打つとはいっても、大一番を迎えるとやっぱり欲が出ますし、負けたくないという気持ちも生まれます。

 

しかし、そういうときこそ原点に戻って「なぜ自分は碁を打つのか?」と考えてみる——すると「面白そうだから」という気持ちに行き着くわけです。

 

自分なりに見えている碁というものを、碁盤の上で表現するような着手を選んでいく——するとそれは自分にしかできない選択をした結果なので「負けてもしかたがない」「負けても悔いはない」と思える。

 

そのうえでなお勝つことができたらほくそ笑み、自分の見えているままの手で勝てたら気持ちいい——それが今の僕のスタイルなんです。

 

で、僕のそのスタイルを無理やり言葉にしてみたのが「ゾーンプレス」なんです。僕にとって碁というのは「広さの関係」と「力関係」がまず目に飛び込んでくるので、そう表現してみました。この言葉を雑誌の講座で初めて使ってみたときに、呉清源先生から「ゾーンプレスとはよい表現ですね」とお褒めの言葉を頂いたので、それ以来ずっと使い続けています。そして「銘琬ワールド」というのは、僕のそうした異質な着手に対して、マスコミの方が名付けてくれた呼び方です。

 

よく「奇抜な打ち方」みたいに言われるのですが、自分にとって最も面白い手を打っているだけなんです。勝ちたいのはやまやまですが、それよりも「自分が面白いと感じた手を打つ」という、自分が決めたことの方が大切だと。

 

年齢を重ねたことで最近は、自分の好みがはっきり分かってきたことも大きいですね。そしてそのように打っても、結果は必ずしも悪いものではありません。自分でコントロールできる世界ではないという意味で「うまくいくときもあれば、いかないときもある」と考えられるようにもなりました。

 

先ほども言いましたが、結果とは「神様がくれるご褒美、福引きみたいなものである」と……。負けることが怖くなくなったので、碁盤に臨むにあたっての不安も今はありません。

 

●アマチュアに最も近いプロ

 

あの「名人戦リーグ全敗」を経験して碁に対する接し方が変わったことを契機に、本因坊や王座という、思ってもみなかったビッグプレゼントを神様から頂くことができました。

 

とはいえ、楽しもうと思って碁を打つようになったから結果がよくなったのか、本当のところは自分には分かりません。でも、このおかげで僕は面白く碁を打ち、楽しくプロ棋士を続けることができました。これからも常に、そうありたいと思っています。

 

僕はですね、あまり深く考えないで素直に打っていくという意味で「アマチュアに最も近いプロでありたい」と思っているんです。精神的にも、技術的にも。

 

それが一番面白いわけですし、どんな単純なことでも自分が分からなければ、実際に試してみようと……。それが一番ワクワクするじゃないですか。この気持ちを、今後もずっと持ち続けていきたいなと。

 

■『NHK 囲碁講座』2013年7月号より

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