趣味

城戸真亜子さんが心奪われる、モチーフとしての「水」


2013.07.29

「escape」

『NHK趣味Do楽 城戸真亜子の油絵って楽しい!』で講師を務める城戸真亜子さんにとって、「水」はここ数年来の作品の大切なテーマだという。なぜ、「水という存在」に惹(ひ)かれるのだろうか。モチーフとしての水の魅力を城戸さんが語る。

 

*    *    *

 

水は、旅先で出会えばまっさきに描きたくなるモチーフのひとつ。なかでも、陽光を受ける屋外プールは、私にとって特別な存在です。夕方の斜光を受けた水面が、邪気なく遊ぶ人たちの動きできらめくのを見ていると、スケッチをする手も、とどまらない瞬間を追いかけるように動き続けます。

 

プールや湖など、境界に取り囲まれた水は、風を受けては水紋を浮かべ、さまざまなものをその表面に映し込み、目に見える現象として見せてくれます。人も、水着ひとつで水に入れば肩書きなんてなくなるもの。肌さえもがただの色となって揺らめいている様子を見ると、皆平等!と痛快ですらあります。

 

思えば、私が描いた最初の大作も水景でした。14歳だった私が、傷んで張り替えを待つ我が家の襖(ふすま)に描いたのは、フォロン(※)を真似(まね)た、舟が漂う静かな海の絵。思春期を迎えた乙女(!)の私が波のない情景を選んだ気持ちには、現在の私も共感できます。能動的にせわしなく波が打ち寄せる海や、自然の力で流れ続ける川は、スケッチ程度はすることがありますが、それよりも湖やプールのように、そこに佇(たたず)んで何かを待っているような風情の水辺のほうが、私にとっては〈心が震える描きたい対象〉なのです。

 

揺れては千々(ちぢ)に様相を変える水に惹かれるのと同時に、水面に浮かんでは消えていく像たちの儚(はかな)い営みは、どこか私たちの生に通じているように思います。何かをなくしたり、何かが壊れたりすると、悲しんだり、ときには絶望することもあるかもしれません。けれども、その後には必ず再生が、未来があるのだから、そこで足踏みをすることはないんだよ――きらめき続ける水面の像たちは、そんな教えもはらんでいるように思われて、見ていて飽きることがありません。

 

※ベルギーの画家、ジャン=ミシェル・フォロン。1934年生まれ、2005年没。

 

■『NHK趣味Do楽 城戸真亜子の油絵って楽しい!』より

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