趣味

負けてばかりだった井道千尋女流初段を導いてくれた両親


2013.06.20

『NHKテレビテキスト将棋講座』では、女流棋士によるリレーエッセイ“さんぽみち”が好評連載中だ。6月号では、「能登の陽だまり」こと井道千尋(いどう・ちひろ)女流初段が、将棋に導いてくれた家族について綴っている。

 

*  *  *

 

6歳のころでしょうか、将棋が大好きな父が私を膝に抱えて、駒の動かし方から将棋を教えてくれました。父が盤に並べた矢倉という形。それから何度も何度も組んだ形だけど、そのはじめての記憶がほとんど無いのが今はとても悲しい。

 

私が育った石川県の珠洲(すず)市という所は海も山も近くにあり、本当にのどかな場所です。電車も通っておらず、遊ぶというと海か山に出かけます。そんな生活を18年過ごしてきました。

 

幼い頃は、夏は海、冬は近所の坂道でソリをし、雪だるまを作って帰宅したら将棋。そう、ずっと遊んでいました(笑)。

 

昔から好奇心旺盛だったので、じっと座っている将棋よりも運動が大好きでした。しかし、父と弟と3人がそろうと将棋が始まります。負けず嫌いが3人もそろえば父といえども子供には負けてくれません。2歳下の弟も強くて、1番弱い私が『負けました』と言う係でした。

 

定跡も知らない、棋譜の読み方も分からない私を、父はあちこちの将棋大会に連れていってくれました。毎回予選落ちなのに。そんな負けてばかりの私が女流棋士を目指そうと思ったのは、中学1年の夏でした。運良く推薦で、中学生選抜将棋選手権の全国大会に出場することができたのです。それまでは大人に交じっての大会で負けて当たり前だったけれど、同じ年代の女の子に大差で負かされての予選落ち。人目をはばからずに涙を流してしまうほど悔しくて、次は負けたくないという気持ちが芽生えました。

 

それからというもの、片道2時間半かけて将棋教室に通い、よい先生や仲間に巡り会えました。今思うと、チャレンジする環境を提供してくれた両親や、たくさんの支えてくれる方々がいたからこそ、将棋の道にまっすぐ進むことができたのだと思います。感謝の気持ちでいっぱいです。

 

今は東京で生活していますが、家族とは毎日連絡をとるようにしています。やっぱり、石川の空気を感じることができますし、何より声を聞くと落ち着きます。最近は子供教室の講師を担当し、親御さんとお話する機会も増えました。礼儀作法を身に付ける、棋力向上、どれに対してもいい環境を作ってあげたいという気持ちが伝わってきます。

 

だから、私もその気持ちに応えられるように、将棋が好きな子がより積極的に取り組んでもらえるように、お手伝いできたらと思っています。

 

そして、私自身も初心を忘れずに、タイトルという目標に向かって、田舎者らしくのんびりじっくり進んでいきたい。また、最近習いはじめた茶道など趣味を楽しむ時間を大切に、広く視野を持って今後の人生を歩んでいけたらと思う今日この頃です。

 

■『NHK将棋講座』2013年6月号より

 

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