趣味

張栩九段&小林泉美六段、NHK杯を語る


2020.10.05

張栩九段 撮影:小松士郎

NHK杯優勝4回を誇る張栩九段。最年少で初出場し、初優勝。記念すべき初タイトルとなった。そして、初段で初出場を果たした小林泉美六段。当時、NHK杯史上初の快挙を成し遂げたご夫妻にお話を伺った。

 

*  *  *

 

初優勝以上に思い出深い出来事

 

──まずは「初出場を果たすまでのNHK杯に対する思い」がどのようなものだったかという点からお話しいただけますか。

 

張栩 憧れの棋戦でしたので、一年でも早く出場したい思いがありました。でも当時は段位によって各棋戦の手合料が決められていたので、段位が六段だった僕は、棋聖戦でリーグ入り(2000年)する戦績を残していたのに、その他の棋戦を含めた総手合料が伸びず、NHK杯の出場枠に食い込めないという悔しい思いをしていました。

 

でもこの悔しさがあったからこそ、次の第49回(01年度)に初出場初優勝を果たすことができたような気もしています。このNHK杯優勝が僕にとっての初タイトルでしたし、勢いに乗ってこの年に70勝することもできました。人生が大きく変わった、思い出の棋戦と言っていいでしょう。

 

泉美 私にとっても、やはり憧れの棋戦でした。プロになってすぐ記録係として起用していただき、その後は棋譜読み上げも務めさせていただいたので、まずはスタッフとして5年、お世話になったことになります。

 

──そして張栩さんが初優勝した決勝戦では、読み上げ係として、その雄姿を間近で見ておられたのですよね。

 

泉美 はい、そうなんです。年齢が近く研究会でも一緒だったので、親しくはしていたのですが、つきあってはいませんでした。それで決勝戦の相手の羽根直樹さんは当時、天元のタイトルを持っていて大活躍していたので「羽根さんが勝つのだろうな」なんて思いながら見ていました。

 

張栩 この頃は交際前夜でして(笑)、優勝して嬉(うれ)しかったのはもちろんですが、局後の打ち上げパーティーが終わったあと、一緒に原宿駅まで歩いて帰ったことを、よく憶(おぼ)えているんです。距離が縮まった気がして、この直後からつきあうようになりました。

 

泉美 私は憶えていたけど、張栩が憶えていたというのが驚きです。

 

──初優勝した羽根さんとの決勝戦を、振り返っていただけますか。

 

張栩 序盤はちょっと苦しめでしたが、中盤で羽根さんの一瞬の隙を衝(つ)いて、少しおもしろくなってからは、よく打てていると思います。なお当時の観戦記には、僕がちょっともたついて羽根さんにチャンスがあったように書いてありますが、僕のほうにやや余裕があるので、逆転されることはなかったでしょう。

 

この時期、羽根さんが天元で、山下敬吾さんも碁聖を獲得したり各棋戦で上位に進出して活躍していました。僕もこのNHK杯優勝でちょっとだけ追いつけたかなという気持ちになったことを憶えています。

 

※続きはテキストでお楽しみください。

 

■『NHK囲碁講座』2020年8月号より

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