趣味

身体であじわう季語「囀」


2013.05.11

四季の事物をまとめた「歳時記」には、さまざまな季語が収録されている。そして、歳時記の季語を少し異なった切り口で分類してみると、際立った風貌を見せてくれることもある。

 

俳人の小澤實(おざわ・みのる)さんが、身体であじわう季語と、その一例である「囀(さえずり)」を解説する。

 

*  *  *

 

季語は、俳句を成り立たせているものとしてもっとも重要なもののひとつです。歳時記には膨大な季語が収められています。ただ吟味してみますと、いくつかの特徴によって分けられると思うのです。

 

ひとつは、人間の器官のどこで捉(とら)えるか、という分類。春の季語で言えば、「蝶」は眼で見て楽しむ季語、「春風」は皮膚で感じて楽しむ季語、そして、「囀」は耳で聞いて楽しむ季語です。「桜」のように、眼で見て、鼻で嗅(か)いで、指で触れて楽しむ、複数の器官で楽しむ季語もあります。また、「啓蟄(けいちつ)」のように直接の器官が思い浮かばない季語もありますね。残念ながら、すべての季語が、この器官による分類に属するというわけにはいきません。

 

他に場所や時間による分類も可能であると考えています。季語には、場所や時間まで指し示しているものがあるのです。これらの要素を意識して季語を見直してみると、ひとつひとつの季語が際立った風貌を見せてくれると思います。この認識に立てば、鑑賞する際にも句作の季語を選択する際にも、踏み込んだ季語の扱いができるのではないでしょうか。

 

今回は耳で聞いて楽しむ季語「囀」について考えてみましょう。繁殖期の小鳥の声ですね。句には小鳥の声が描かれることになります。そして、句からは囀を聞くひとが想像されます。作者に重なる登場人物ですね。そこに囀の季語の魅力があります。

 

囀の高まり終り静まりぬ

高浜虚子(たかはま・きょし)

 

囀に色あらば今瑠璃色に

西村和子(にしむら・かずこ)

 

囀の声そのものをことばで表現することはかなりむつかしいと思いますが、上の二句がありました。虚子の句は、囀の声の変化を捉えています。沈黙した時点から高らかな囀を思い返しています。囀に人生まで重ねているかのようです。

 

和子の句は声を色彩で捉えているのが、斬新ですね。きっと絶妙な声ではないでしょうか。鳥の色は瑠璃色かもしれませんが、そうでない色を想像したほうが楽しいでしょう。

 

■『NHK俳句』2013年4月号より

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