趣味

ファッションの季語から見える日本の暮らし


2013.05.28

「えっ、これも季語なの?」と驚いてしまうような意外な季語を新しいで分類で楽しむ俳人・神野紗希(こうの・さき)さんの連載「俳句さく咲く!」。第2回のテーマは「ファッション」だ。

 

*  *  *

 

番組で着る衣装を買いに、デパートに行ったときのこと。「このシャツに合うズボンありますか」と聞くと「パンツなら春夏はベージュがおすすめですよ」と店員さん。「スパッツありますか」と聞くと「レギンスはこちらです」。最近はズボンのことをパンツ、スパッツのことをレギンスと呼ぶのですね。流行の変化がめまぐるしいファッション用語に、ついていけなくなった今日この頃です。

 

 

ひろげればはじめて水着かと思ふ

 田中裕明(たなか・ひろあき)

 

小さな布らしきものが置いてあるので何かと思って広げてみると、どうやら水着らしいというのです。ワンピースの水着なら広げた時点で「水着だと分かる」はずですから、「水着かと思ふ」という確信の持てない様子、おそらく隠す面積が少ないビキニタイプの、ファッション性の高い水着でしょう。娘の水着をはからずも手にとってしまった父の「こんなよく分からないものを着て……」という困惑が、ぽつりと呟つぶやいたような口調に表れています。

 

歳時記の「生活」の項には、ファッションにまつわる季語がたくさんあります。特に多いのは夏と冬。夏なら麻服、あっぱっぱ、ショートパンツ、袷(あわせ)、単衣(ひとえ)、浴衣(ゆかた)、甚平、アロハシャツ、サングラス、麦藁(むぎわら)帽子、ハンカチ、冬なら毛皮、セーター、カーディガン、革ジャン、外套(がいとう=コート)、冬帽子、耳当、ストール、手袋、全部季語です。夏の和服全般を夏衣(なつごろも)、洋服全般を夏服と総称してもいいですし、季節の変わり目に行う「更衣(ころもがえ)」も初夏の季語です。冬には重ね着や着ぶくれ、懐かしいちゃんちゃんこやねんねこといった季語もありますね。暑い夏・寒い冬を乗り切る生活の知恵として、衣服もまた日本人の暮らしと深く関わってきたのです。

 

春には、春コートや春日傘、春手袋といった軽やかな季語に加えて、花衣(はなごろも)なんていう素敵な季語もあります。

 

■『NHK俳句』2013年5月号より

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