趣味

伊田篤史八段と村川大介八段、遅すぎた初対決


2019.04.05

左/伊田篤史八段、右/村川大介八段 撮影:小松士郎

第66回NHK杯3回戦 第5局は伊田篤史(いだ・あつし)八段(黒)と村川大介(むらかわ・だいすけ)八段(白)の公式戦初手合となった。丹野憲一さんの観戦記から、序盤の展開を紹介する。

 

*  *  *

 

遅すぎた初対決

 

昨年、井山裕太NHK杯の一強体制が崩れ、若手の台頭が期待される今年の囲碁界。

 

歴代の七大タイトル獲得者で井山より年下なのは、三人しかいない。そのうちの二人が村川大介八段と伊田篤史八段だ。

 

村川は2014年、当時六冠を保持していた井山から王座位を奪取。そして伊田は15年、高尾紳路十段(当時)を破り十段位を獲得。入段からタイトル獲得までの年数最短記録にもなった。また、伊田はその年、史上最年少の20歳でNHK杯優勝も果たしている。

 

当時は新たな時代が始まるかと思われたが、両者とも獲得の翌年に井山からタイトルを奪われ、七冠達成を許すことになる。

 

ともに最近結婚し、公私ともに最も充実した時期を迎えている両者。対戦成績が気になるが、驚くことに今回が公式戦初手合だ。

 

遅すぎた初対決、予想どおりの重厚な大熱戦が繰り広げられたが、最後は意外な結末が…。

 

昭和の薫り

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最近のプロの布石は、アマチュアにとっては難解極まりない。言うまでもなく、AI流が大流行しているためである。

 

まだ二十代と若く、勉強熱心な村川と伊田のことだから、AI流の打ち方は十分に研究していることであろう。

 

初手の三々、白の二連星に対して小目から黒5の二間ジマリ。この5手だけを見ると、AI流の影響を受けた進行に映る。

 

しかし白8の肩ツキ以降の進行からは、昭和の薫りがぷんぷん匂ってくる。黒13のカカリに対し白Aなどと受けるのは、右方に白の構えが控えているので気が進まないところ。

 

やはり白は14と一間にハサんだ。続いて黒Bと三々に入る実戦例が最近も多く見られるが「伊田さんの好みは一間です」と解説の結城聡九段が予想したとおり、伊田は黒15の一間トビから黒17とカケていく。ここで白19とハウ進行が、皆さんにとってはなじみ深いのではないであろうか。

 

村川は白18のコスミツケから黒21まで、左上隅の実利を重視する進行を選択した。これも昭和時代から平成にかけて、流行した定石の一つである。

 

白22のツメは、白24へのツケを狙った現代流の打ち方。続いて黒Cなどと受けておくのも立派な一手だが、プロは相手の言うことを聞くのは嫌らしい。

 

伊田は右下を受けずに黒23と我が道をいく。黒が手を抜いてきたので、白は24のツケから早速仕掛ける。

 

結城九段によると、村川、伊田ともに柔軟な棋風で、どんな碁でも打てるという。

 

ただし、伊田は1回戦で藤沢里菜女流本因坊、そして2回戦ではあの山下敬吾九段を、ともに戦いを仕掛けて倒してきたように、もともとは豪腕で知られている。対する村川も、2回戦の三村智保九段戦で、中盤に入って早々に勝負を決めたように、戦いになれば一歩も引かない。

 

ここからの数手で、じっくりした碁になるのか、それとも戦いの碁になるのか、一局の流れが決定づけられることになりそうだ。村川は、よほどのことがないかぎりはポーカーフェイスを崩すことがない。表情に変化があった場合は、何かが起きたと考えてもいいであろう。

 

反対に伊田は、分かりやすい。形勢がよくないときは、苦笑いしつつ、しきりに体を前後させ、頭に手をやる。逆に形勢が好転するとほぼノータイムで着手する。二人のしぐさにも注意が必要だ。

 

※終局までの棋譜と観戦記はテキストに掲載しています。

※肩書・年齢はテキスト掲載当時のものです。

 

■『NHK囲碁講座』2019年3月号より

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