趣味

虎丸の才気、羽根の信念


2019.02.27

左/羽根直樹九段、右/芝野虎丸七段 撮影:小松士郎

第66回NHK杯3回戦 第2局は、羽根直樹(はね・なおき)九段(黒)と芝野虎丸(しばの・とらまる)七段(白)の対局となった。佐野真さんの観戦記から、序盤の展開を紹介する。

 

*  *  *

 

虎丸の才気、羽根の信念

 

2017年の象徴が「井山裕太による再度の七冠全制覇」ならば、2018年は「七冠崩壊」ということになるだろう。

8月に碁聖を許家元に、11月に名人を張栩に奪われたことで、井山一強時代に陰りが生じ始めている。その後の王座戦と天元戦では防衛に成功したが、一力遼と山下敬吾を相手にいずれも3勝2敗という僅差だったこともあり、今後の碁界は戦国時代となる可能性が高まってきた。

 

覇権争いが混迷を深めていく中で、次なるスーパースター候補の筆頭と目されているのが、本局に登場の芝野虎丸七段である。そのシャイな人柄からは想像もつかないほどの盤上での剛腕ぶりが魅力で、今やファンの間では人気棋士として完全に定着した。

まだタイトル戦への登場こそないものの、それも時間の問題。世界戦では日本のポイントゲッターとして大活躍中で、今期NHK杯でも有力な優勝候補である。

 

驚きのツケ

 

棋聖2期、本因坊2期、天元3期、そしてNHK杯で1度の優勝など、輝かしいタイトル歴を誇る羽根直樹九段であるが、2011年の碁聖位を最後に、ビッグタイトル獲得から遠ざかっている。

 

昨今の若手躍進の流れに押されている格好だが、今もなお名人戦と本因坊戦のリーグに在籍するなど、第一線での活躍は続いている。きっかけ一つでいつでも大舞台に戻ってくる力量の持ち主であることは万人が認めるところで、同年代である張栩の名人復位にも刺激を受けていることだろう。

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握って羽根の先番。まず黒5のシマリが「新鮮!」と映るのだから、布石感覚がこの一年ほどでいかに様変わりしたかを痛感せざるをえない。人工知能(AI)の影響で、今や小目からのシマリといえば、黒Aの大ゲイマやBの二間が主流となっているのである。なお、この黒5に付随して、解説の武宮正樹九段が羽根の碁について、次のように語っていたのが印象深かった。

 

「僕はAIの碁の感覚をとても評価しているのですが、そのAIが打った手を誰もがまねして打っている、昨今の碁界の風潮には疑問を感じています。その点で羽根くんは、AIのまねを一切しません。自分が培ってきた碁の考え方を貫いて結果を出しているのだから、本当に立派で、敬服に値すると思うのです」

 

一方で芝野は、まさにAI時代の申し子。インターネットで閲覧できる数多くの碁に目を通し、最新の情報収集に余念がない。ただし彼がAIの着手をうのみにしていないことは明らかで、だからこそポスト井山裕太の最有力候補と言われるまでに成長した。まずは自分の考えという確固たる核が存在し、そこにAI発の新感覚をそしゃくして上乗せしているのである。ゆえに武宮九段も、芝野の碁を「羽根くんとはまた違った意味で、見ていてワクワクする碁だよね」と高く評価している。

 

そして立ち上がり早々、芝野の斬新な一手が飛び出した。黒7のヒラキ(白6との間が四間あるのでハサミとは呼びにくい)に対する、白8のツケである。局後、本人に話を聞いたところ「ネットで見たことがあり、有力だと思ったので…」とのことだった。

 

意図としては、隅が小ゲイマジマリで堅いので、右上方面は固めても惜しくないというもの。黒がCのハネなら白Dとオサえ、右上黒を固めながら右下の白を治まろうとしている。

 

従って羽根は、黒9とこちらをハネて反発した。

 

※終局までの棋譜と観戦記はテキストに掲載しています。

※肩書・年齢はテキスト掲載当時のものです。

 

■『NHK囲碁講座』2019年2月号より

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