趣味

坂井秀至八段の「終止符を打つ一手」


2018.12.27

撮影:小松士郎

坂井秀至(さかい・ひでゆき)八段といえば、医師免許を取得したあとに棋士の道を選んだ異色の経歴が有名。周囲を笑わせる独特な話術の持ち主でもあります。今回は、碁聖を獲得した年の印象深い一手を語っていただきました。

 

*  *  *

 

いつもツブされていた

 

棋士を選んだ理由としては、大学卒業を前にした一年くらいの間に、囲碁の棋力がどんどん伸びてきたことが大きかったですね。ずっと囲碁と学業を両立してきて、両方やれたらいいのですけど、医者を続けるなら囲碁はやめることになる。それはちょっともったいないなと思うようになりました。いいタイミングで囲碁が強くなったのですね。それまで囲碁だけに専念したことはなかったので、専念したらどこまでいけるのか挑戦してみたい、という強い気持ちがありました。

 

プロ入りして3年後の2004年に名人戦リーグ入りを決めてしばらく在籍したのですが、トップの方たちと対局を重ねてもまれたことが、その後のタイトル獲得につながったのかなと思います。

 

今回紹介するのは、碁聖戦挑戦者決定戦で、相手は山下敬吾天元です。僕は、後半はわりと自信があり、大ヨセくらいまで五分でいけば誰が相手でもいい勝負ができると思っていたのですが、山下さんと対戦すると、序・中盤でツブされることが多くて、なかなかヨセまでいかなくて(笑)。僕としてはやりにくい、本当にいつも手ごわい相手でした。

 

僕にとって「タイトル」は…その当時、一生懸命やって調子もよければ、タイトルホルダーの方と対局しても勝つこともあったので、頑張れば手が届くかもしれないという気持ちもありました。けれどもやはり勝率はよくない。総合的にはなかなか難しいと思っていました。そんな中で、この挑戦者決定戦を迎えました。

 

対局前は「一生懸命やって勝つ」ということだけをいつも考えているので、特にプレッシャーを感じることはありませんでした。苦手の山下さんが相手でしたが、何とかチャンスをうかがって…という気持ちでした。

 

ところがこの碁も、序盤で先に右上、左上と黒に実利を取られて、足早に立ち回られ、苦戦のスタートになりました。中盤で山下さんが安全に堅く打たれていたら、依然として僕のほうが苦しい内容でした。

 

ただ、少し隙ができてコウを仕掛けるチャンスを得て、一挙に激しい戦いになりました。こちらが局面図です。

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次の「一手」自体は、それほど難しい手ではないのですが、大一番での決め手になったので、とても印象深いのですね。山下さんには誤算があり、少し前の局面から「ありえない。全部死んじゃった」というような内容のことを激しくぼやいておられて、それも印象に残っています。

 

※後半は『NHK囲碁講座』2018年12月号に掲載しています

 

■『NHK囲碁講座』2018年12月号より

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