趣味

将棋連盟会長の“新幹線飛車”


2018.10.08

左/佐藤康光九段、右/塚田泰明九段 撮影:河井邦彦

第68回 NHK杯戦 1回戦 第15局は、佐藤康光(さとう・やすみつ)九段と塚田泰明(つかだ・やすあき)九段の対局だった。北野新太さんの観戦記から、序盤の展開を紹介する。

 

*  *  *

 

新幹線飛車

 

対局を待つ控え室。壁に架けられたカレンダーの話題になった。来年4月で平成が終わるのなら、最終ぺージの2019年の元号はどのように表記されているのだろう、と。

 

めくってみると「平成31年」の文字はない。もちろん「●●元年」も。

 

一瞬の間を置き、解説の島朗九段が微笑を浮かべて言った。

 

「歳月が過ぎましたねえ」

 

前夜遅くまで地方で公務に臨んでいた日本将棋連盟会長は朗らかな顔で同調する。「彼が攻めれば、道理が引っ込む」と称される男も、戦闘前の一服を終えたのか、レザー製の洒落(しゃれ)たシガレットケースを手元に置いたまま笑顔で応じている。

 

昭和62(1987)年、佐藤は四段に昇段し、塚田は王座になった。島は塚田と「昭和55年組」の同期で、佐藤とは言わずと知れた「島研」の同胞。佐藤と塚田は戦うため、島は語るために、平成という時代が終わろうとしている今、同じ時間と空間を再び共有している。

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対局開始。5手目、佐藤の指先は2二の地点へと伸びる。緻密と豪放が共存する佐藤将棋における後者の象徴。戦型はダイレクト向かい飛車になった。

 

現代将棋の潮流には乗らない裏芸に、なぜ佐藤はこだわるのだろう。

 

「いきなり飛車を8八(2二)に大きく振り回せることの爽快感でしょうか。新幹線に乗っている感じというか…。精神的な部分ですが、気分よく序盤戦を進めることができます」

 

言わば、東京から博多へと走る新幹線。にもかかわらず途中停車がないから「ダイレクト」なのだが、佐藤が振ればダイナミズムの予兆でもある。

 

「定型があまりないので序盤で個人の感覚的主張を見つけやすいところが面白さでしょうか」

 

両者の過去10局(佐藤8勝、塚田2勝)はすべて相居飛車。ハンカチで口元を押さえた塚田は意表を突かれた表情を浮かべている。「矢倉になることが多いので若干想定外でした」

 

▲8八飛(1図)の局面での前例13局のうち佐藤は先手を持って7局指している。3月の順位戦A級最終局・屋敷伸之九段戦でも採用して勝っている。

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※投了までの棋譜と観戦記はテキストに掲載しています。

※肩書はテキスト掲載当時のものです。

 

■『NHK将棋講座』2018年9月号より

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