趣味

日本初の新婚旅行 坂本龍馬の思い出のカステラ


2018.04.15

家庭でもつくりやすくアレンジしたカステラ。つくり方はテキストに掲載しています。(料理:久保美穂子さん 撮影:蛭子真さん)

幕末の日本を疾風のように駆け巡った坂本龍馬(さかもと・りょうま)。そんな中、新妻・お龍(りょう)との新婚旅行は、安らぎのひとときだったことでしょう。その折に、持っていったのが「カステラ」。卵と砂糖たっぷりのお菓子は、当時の極上品。分け合って甘い時間を過ごしたのでしょうか。龍馬とカステラの縁について、志學館大学教授の原口 泉(はらぐち・いずみ)さんが解説します。

 

*  *  *

 

龍馬の手紙

 

坂本龍馬は数多くの手紙を残しています。家族や親戚、また友人、知人に宛てて、興味深い手紙をしたためています。有名な「日本を今一度せんたくいたし申候(もうしそうろう)」という文も、文久3年(1863)6月29日付で姉に宛てた手紙に書かれていたものです。

 

乙女とは仲がよかったためでしょうか、龍馬の手紙には、乙女宛てのものがたくさん残っています。中でもひときわ目を引く絵入りの手紙には、龍馬が新妻のお龍と一緒に薩摩の霧島山に登ったときのことを書き記しており、とても楽しそうな様子がイキイキと伝わってきます。

 

この山登りのお供が、なんとカステラだったのです。

 

小松帯刀が渡したカステラ

 

薩摩で明治維新の原動力になった「薩長同盟」の仲介人という重要な任務を終えた龍馬は、土佐から上洛した中岡慎太郎の仲介でお龍との結婚披露を行ったといわれています。しかし、幕府のお尋ね者になってしまった龍馬は、気軽に出歩くことも難しくなっていました。そこで、西郷隆盛や小松帯刀らは、龍馬にお龍とともに京を離れ、薩摩へ行くことを勧めました。これが、日本で初めてといわれる「新婚旅行」です。

 

いつなんどき襲われるかもしれない京と違い、薩摩では湯治を兼ねた新婚旅行をのんびりと楽しむことができました。3か月ものとう留でしたが、費用は薩摩藩持ちであり、思いっきり旅行を満喫したことでしょう。主な滞在先であった霧島温泉は、当時も現在も全国的に有名な名湯で、文化(ぶんか)14年(1817)の温泉番付では、全国を東西に分けた西の番付で8位にランクインされています。

 

ここでお龍が「霧島山に登りたい」と言いだしました。でもそこは「男子でも登りかねるほど厳しいのは例えようもない。焼け土はさらさらで、少し泣きそうになる。五丁も登れば履物が切れる」と、後日に姉・乙女に龍馬が書き送ったほどの険しい山でした。それほどの山だったため、龍馬は困った顔をしますが、「お龍は言いだしたら聞かぬやつだから連れていってやろう」と言います。その会話を聞いた薩摩藩の家老・小松帯刀が、「山はご飯は禁物だからこれを弁当に」と“カステイラ”を切ったものを2人に渡したということを、お龍が晩年に語っています。“カステイラ”とはカステラのことです。

 

薩摩、大隅、日向(ひゅうが)について記した『三国名勝図会(さんごくめいしょうずえ)』に、薩摩の名産はカステラとあり、古くから鹿児島の名産菓子でした。小松は、薩摩に来た2人に、郷土のものを食べさせてあげようと思ったのでしょう。龍馬の新婚旅行のお供は、甘く楽しい思い出の味、カステラ。だからこそ、お龍もずっと忘れずに覚えていたのに違いありません。

 

海援隊の記録に残るカステラのレシピ

 

龍馬とカステラといえば、もうひとつ意外な記録があります。それは、なんとカステラのレシピ。海援隊の雑記録『雄魂姓名録(ゆうこんせいめいろく)』に記された「カステイラ仕様」がそれです。玉子(卵)、うどん(粉)、さとう(砂糖)というシンプルな材料で、これを合わせて焼く、とだけ書かれています。残念ながら詳しいことはわかりませんが、龍馬やその仲間たちがカステラをつくったか、つくろうとしていた様子がうかがえます。

 

卵と砂糖をたっぷりと使って香ばしく焼き上げたカステラは、当時も憧れの味でした。きっと龍馬も薩摩や長崎で食べたその味が忘れられなかったのではないでしょうか。

 

■『NHK趣味どきっ! 幕末維新メシ』より

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