趣味

究極のおもてなし 藪内流十四代家元襲名披露茶事


2018.03.29

家元が炉に炭をつぐ様子を客は静かに拝見する。燕庵の点前座に座れるのは家元ただひとりだ 撮影:亀村俊二

2015年6月に藪内流宗家14世家元を襲名した藪内 紹智(やぶのうち・じょうち)さん。藪内家で執り行われた家元襲名披露茶事の様子を紹介します。

 

*  *  *

 

燕庵での家元の炭点前と緝凞堂の和やかな懐石

 

藪内家では平成27年(2015)6月7日に十四代家元が襲名され、関係者を招いての襲名披露茶事が執り行われてきました。平成29年(2017)12月11日、その締めくくりとなる茶事が行われました。夜来の雨も上がり、京都の冬らしい澄んだ空気の中、藪内家の庭はいちだんと緑鮮やかになりました。

 

午前十時半過ぎ、客が次々と訪れ、受付を済ませると寄付待合に向かいます。一同がそろうと白湯をいただき、腰掛待合に進みます。蹲(つくばい)の水を改める音が響き、ほどなく家元が猿戸(さるど)に姿を現し、主客は無言の挨拶を交わします。

 

家元が燕庵に入ったころを見計らって、客は露地へと歩を進めます。正客から順に蹲にて手と口を清め、にじり口をくぐります。畳半畳ほどの狭い入り口から頭を下げて入ることは、客を謙虚な気持ちにさせるといわれます。

 

薄暗い燕庵の室内で客は床の間を拝見します。そこには流祖剣仲筆の「無傳」がかかり、香炉飾(かざ)りがされ、特別な茶事の雰囲気を醸し出します。炉にはたっぷりとした釜がかかっています。

 

客全員が着席すると、静かに茶道口が開き、家元の挨拶ののち、炭点前が始まります。炭がつがれ始めると、客は炉に近寄り、拝見します。藪内流独特のあられ灰の形の美しさ、丁寧に炭がつがれる様子に、客は見入っていました。由緒ある香合を拝見することも大きな楽しみです。

 

炭点前が終わると、客は庭を伝って緝堂へと移動し、懐石をいただきます。膳には紅白なますが添えられ、焼き物は尾頭付きの明石の鯛など、祝いの席にふさわしく、また季節感あふれる料理が次々と持ち出されます。家元のふるまう酒を客は笑顔で受け、懐石は楽しく進みました。

 

続く主菓子は濃茶をおいしくいただくためのもの。家元襲名披露のときにのみ供される「藪団子(やぶだんご)」は、道明寺の団子に和三盆をのせただけの、まさに茶席菓子の原点ともいえるものです。そのほのかな甘みを堪能した客は、いったん腰掛待合に戻ります。

 

一碗の濃茶を楽しみ薄茶にくつろぐ

 

銅鑼の合図で、客は再び燕庵に入ります。床の間には見事な竹の花生(はないけ)に紅白の椿と枝物が生けられています。

 

茶道口より家元が現れ、いよいよ濃茶点前となります。炭点前でつがれた炭により、釜の湯は沸き、「松風(まつかぜ)」と称される静かな音が聞こえていました。

 

大ぶりの茶入から濃茶が茶碗に入れられ、湯が注がれ、家元が茶を練り始めると、濃茶の良い香りが茶室に立ちこめます。客にとっては至福のひとときです。燕庵の窓々に掛けられた御簾(みす)が巻き上げられると、茶室内に光が差し込み、客は燕庵のもう一つの表情に出会えるのです。

 

家元が心を込めて練り上げた濃茶を客全員がいただいたあと、道具の箱書きが披露されました。由緒ある道具の数々に客は感嘆し、満足の様子でした。

 

濃茶のあとは再び緝堂で薄茶がふるまわれ、家元は客と和やかに言葉を交わします。客は楽家初代長次郎の黒楽茶碗などの貴重な茶碗で茶をいただき、歴史を経た道具を拝見できる喜びをかみしめ、茶事は終わりました。

 

■『NHK趣味どきっ!茶の湯 藪内家 茶の湯五〇〇年の歴史を味わう』より

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