趣味

今では死語となってしまった冬の季語「大根配」とは


2013.03.01

寒くなると、大根や蕪などの根菜類は甘みが増し、豊かな味わいを見せるようになる。大根は冬の季語として知られるが、かつて「大根配(だいこんくばり)」という季語があったということを知る人はそう多くはないだろう。俳人の大石悦子さんは幼少時に「大根配」を実際に体験したことがあると話す。

 

*  *  *

 

子どもの頃、どこの家でも冬になると、大根や白菜などを大きな樽(たる)で漬けました。その時期になると、なじみの農家の小父(おじ)さんが、リヤカーいっぱいの大根や葱(ねぎ)を持って来てくれました。母は手伝いの人の手を借りその大根を足るに漬けるのでしたが、洗って、干し、漬けるまでの間の活気に満ちた台所の雰囲気が、子ども心にも心地よく感じられたものでした。

 

それで思い出したのですが、以前、句会で「大根配」という題が出たことがありました。「師走(しわす)に入ると、家々の下肥(しもごえ)を汲みに来ていた農家が、一年分のお礼として取れた大根を配ること」という説明を聞いて、リヤカーに山と積んだ大根がそうだったのかと、懐かしくてなりませんでした。下水道が完備された当今、「大根配」は全く死滅した季語となりましたけれど。

 

■『NHK 俳句』2012年12月号より

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