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NHK杯戦出場棋士名鑑の「5年で1勝5敗」に発奮──佐藤康光九段、優勝の原動力


2017.06.02

写真:河井邦彦

第66回NHK杯テレビ将棋トーナメントで見事優勝を果たした佐藤康光(さとう・やすみつ)九段にお話をうかがいました。

 

*  *  *

 

──優勝おめでとうございます。今回は昨年6月号の付録『NHK杯戦出場棋士名鑑』を見て発奮されたそうですね。

 

佐藤 ここ5年の成績が1勝5敗と書いてあって気になっていました。前に2連覇したときは、次の年も準決勝まで行って13連勝したんですけど、突然負け始めました。戦い方は特に変えていませんが、いい方向に出ました。

 

──決勝戦までで印象に残った対局を教えてください。

 

佐藤 どれも印象深いですが、3回戦の斎藤慎太郎七段戦と準決勝の佐藤天彦名人戦です。3回戦は終盤でもかなり差がついていたので、よく勝てたなと。準決勝は公式戦で初めて角頭歩戦法を使いました。最近後手で指されていますが、前から先手でどうかと考えていました。序盤は満足の展開でしたが、終盤は負けてもおかしくなかったです。

 

──今回のNHK杯は5局とも年下との対戦でした。

 

佐藤 今まで同世代との対局が多かったですが、近年は若手の層が厚くなったと感じます。2回り下の棋士との対局が普通になりました。今回では斎藤七段や千田翔太六段。増田康宏四段はさらに若い。

 

──2月に日本将棋連盟の会長職に就かれました。

 

佐藤 就任してまだ日が浅いので、しばらく忙しいですね。研究会をやりたいですが、回数は減りますね。平日は無理なので土日にできれば。

 

──近年は体を揺らしたり、せき込んだり、気力を振り絞って指されています。

 

佐藤 今はそういう気持ちがないと指し手に出てしまいます。対局時は戦う意識を前面に押し出さないと大変かなと。

 

──若手時代は理論重視だったのが、年代を経て総合力で戦われているのですね。

 

佐藤 経験をうまく生かして戦いたいと考えています。最新形も興味はありますが、指す機会が減りました。それよりも後悔しない将棋を指したいと考えています。

 

──早指しのNHK杯で心がけていることはありますか。

 

佐藤 自分の感覚を信じていますから、それを基に指し手を構築します。手を読む前にまず攻めるか守るか、決めにいくかなどを直感で判断します。そういう方針が今回はある程度正しかったので大崩れしなかったと思います。

 

──5年前の王将獲得では、「娘にタイトルホルダーとしての姿を見せたかった」と話していました。今は2人目のお嬢さんがいらっしゃいます。

 

佐藤 NHK杯で私が映ると、長女は普通に見ていますが、次女がテレビ画面の前まで行って「パパ」と言ってくれます。テレビ棋戦ならではですね。娘に戦う姿を見てもらい、結果を残せたのは心の支えになります。40代であまり実績を挙げられなかったと思っていましたから。家族に感謝しています。今回はファンの方の期待も大きかったですね。

 

──現役棋士として、会長として、抱負をお願いします。

 

佐藤 ソフト不正疑惑でご心配かけている状況が続いています。三浦弘行九段の名誉回復や将棋界の信頼回復を一歩一歩進めないといけません。

 

プレーヤーとしては実績を積み重ねたい。NHK杯優勝やタイトル挑戦の気持ちを持ち続けたいですね。両立は大変と思いますが、会長としては47歳でまだ若いです。それを武器に戦います。

 

インタビュー:君島俊介

 

■『NHK将棋講座』2017年5月号より

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