趣味

張栩九段、8年ぶりのNHK杯優勝


2016.05.25

撮影:小松士郎

昨年度優勝の伊田篤史NHK杯と準優勝の一力遼七段がともに初戦で、そして優勝候補の井山裕太棋聖が準々決勝、結城聡九段が準決勝で敗退という波乱の展開となった今期のNHK杯。決勝戦は、30代ながらすでにベテランと言ってもおかしくない戦績を残している張栩九段と、新鋭・寺山怜四段の対決となった。

 

*  *  *

 

上り調子同士の対決

 

第63回NHK杯テレビ囲碁トーナメントの決勝に勝ち上がったのは、上り調子と言われる張栩九段と寺山怜四段だ。36歳の張栩九段は数年前から不調と言われてきたが、最近かなり調子を取り戻してきているとの噂(うわさ)だ。本戦では、昨年11月まで王座を保持していた村川大介八段、そして毎年優勝候補に挙げられる結城聡九段らを下してきた。対する25歳の寺山四段は、弟弟子の本木克弥七段が本因坊リーグ入りを果たすなど最近の若手の活躍が刺激になっているのか、頭角を現しつつある。今回も初出場ながら、昨年準優勝の一力遼七段、そして井山裕太棋聖を破った河野臨九段などといった強敵を倒してきた。

 

対局前の控え室では、予定時間のかなり前に到着した寺山四段が終始リラックスした表情を見せていたのに対し、張は目を閉じて息を整え、気合い十分の様子だ。

 

決戦は、張の黒番で始まる。解説の小林覚九段がそれぞれの棋風を「隅々まで碁盤全体を使う」張と、「落ち着きは岩のごとし」の寺山と評すると、寺山はその棋風どおりじっくりとした展開に持ち込もうとしているように見える。「世界一厚い碁」を打つとされる今村俊也九段が、控え室で「宇宙一厚い一手!」と驚きの声を上げる手も飛び出す。しかし、ひと隅がまだ空いている中、仕掛けたのは寺山だった。コウを得意とする張に対し、序盤早々から意欲的な手を連発してコウを仕掛けたのだ。

 

張、8年ぶりの優勝!

 

「ここで僅かに打ちにくくした」という張だが、中盤に入るとその真骨頂とも言えるコウを駆使しながら碁盤全体を打ち回すと、みるみる形勢は黒に傾く。

 

しかしここで簡単に終わる寺山ではない。張の読みの裏をついた勝負手を放つと、それが見事にツボにはまる。控え室から「かなり細かい」という歓声が上がる中、寺山がその勢いで一気に勝負を決めようと黒の大石を取りかけにいった瞬間、張が巧みに両コウでの生きを得て、あっけなく幕切れとなった。

 

コウで追いつき追い越し、最後は両コウで決着という、完全に張の全盛期を思わせる打ちぶりであった。

 

日本開催のテレビ囲碁アジア選手権に期待!

 

昨年から家族とともに一時的に台湾に移り住んでいた張だが、今年の夏には日本に戻ってくるという。

 

「これまで多くの方々にご心配をおかけしましたが、これからを楽しみにしていてください」と、今後の巻き返し、そして打倒井山を誓った。

 

今年夏に行われる予定のテレビ囲碁アジア選手権戦は、3年ぶりに日本開催となる。張と寺山、両出場者の活躍をお楽しみに!

 

■『NHK囲碁講座』2016年5月号より

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