趣味

現代振り飛車党の二人が選んだ序盤の手とは


2016.04.20

左/久保利明九段、右/藤井 猛九段 撮影:河井邦彦

第65回 NHK杯戦 準々決勝 第3局は、久保利明(くぼ・としあき)九段(先手)と藤井猛(ふじい・たけし)九段(後手)という振り飛車党同士の対決となった。上地隆蔵さんの観戦記から、序盤の駆け引きの様子をお送りする。

 

*  *  *

 

駆け引き

 

両者は現代振り飛車の代表的棋士。戦型は表看板の相振り飛車か、あるいは裏の裏を突いて相居飛車か? 序盤の駆け引きに注目すると、久保がヒョイと3手目▲2六歩(1図)。あっさり居飛車を選んだ。ならば藤井はエースの四間飛車を投入するかと思われたが、△5四歩と比較的珍しいゴキゲン中飛車の意思表示。2年ぶりのNHK杯解説役登場となった羽生善治名人は「藤井さんが久保さんのお株を奪いましたね」と、にこやかに語る。2人がそれぞれオープニングでひねった。

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藤井の序盤

 

藤井がすごいのは序盤を独力で創(つく)ってしまうことだ。その集大成が藤井システムであり、最近は藤井矢倉も評価が高い。無駄をそぎ落とし、論理で構築された手順。辛口の同業プロたちも、洗練された藤井の序盤は「美しい」とさえ言う。

 

順位戦など持ち時間が長い対局開始のとき、藤井はしばらく腕組みし瞑想(めいそう)する。その姿が絵になる。脳内では、あらゆるシミュレーションが展開されているのだろう。小説家が書き出しに心血を注ぐように、藤井も序盤に妥協を許さない。

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久保の工夫

 

「▲6八銀に代えて▲4六銀なら前例が多い。(3図の) この形は珍しい」と解説の羽生名人。久保が意識的に工夫したことを示唆した。▲2四歩〜▲4六銀は味を残す手順。次に3筋からの桂頭攻めを見つつ、△7六飛には▲7七銀。以下金銀を盛り上げて飛車を圧迫する。これが▲6八銀の効果。歩損でも先手が指せる。藤井はその展開を避け、4筋を伸ばし、4六の銀を後退させた。そして静かに持ち駒の角をつまむと、思わせぶりな手つきで△4四角(4図)と打った。早くも勝負手だ。

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※投了までの記譜と観戦記はテキストに掲載しています。

 

■『NHK将棋講座』2016年4月号より

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