趣味

「遍路」っていつの季語?


2013.03.25

「天為」を主宰する俳人・有馬朗人氏が新しい季語「遍路」を解説する。

 

*  *  *

 

毎年、春〜秋に20万人が訪れるという「遍路」ですが、「遍路」は春の季語です。お遍路、遍路笠(がさ)、遍路杖(づえ)等々も季語となっています。四国では春になると札所(ふだしょ)と呼ばれる寺々の周辺に、巡礼して廻る遍路の姿が多くなります。そこで「遍路」が春の季語となりました。他の季節、特に秋にも遍路を見ることがありますが、それは例えば「秋遍路」のように、夏とか秋を付けて区別します。

 

「遍路」は今書きましたように主に四国の遍路のことです。弘法大師(こうぼうだいし)空海(くうかい)は四国の讃岐(香川県)に生まれました。そのこともあって四国には空海に関係があった寺がたくさんあります。特に八十八箇所の寺には番号がついていて、それを札所と呼んでいます。一番札所が徳島県鳴門市大麻町の竺和山(じくわざん)霊仙寺(りょうぜんじ)、最後の八十八番札所が香川県さぬき市の医王山(いおうざん)大窪寺(おおくぼじ)です。この八十八の札所を順番に巡礼するのが遍路です。

 

一度の旅で全部を廻ることを「通し打ち」、何回かの巡礼に分けることを「区切り打ち」といいます。阿波国の札所は「発心(ほっしん)の道場」、土佐国の札所は「修行の道場」、伊予国の札所は「菩提(ぼだい)の道場」、讃岐国の札所は「涅槃(ねはん)の道場」と呼ばれています。区切り打ちをするとき、阿波とか土佐とか一国ずつに分けて巡礼するとき「一国参り」と呼ぶのだそうです。そして順番通りに巡礼をするのを「順打ち」と呼び、逆に回るのを「逆打ち」というようです。

 

遍路は背に「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」と書かれた白衣を着てその上に笈摺(おいずり)を着ます。笈を背負った時、背が摺(す)れるのを防ぐためです。手には金剛杖や鈴などを持ち、経文と同行二人と書いた菅笠をかぶって各札所を巡拝します。

 

四国遍路は江戸時代から行なわれていましたが、四国は都から遠く離れていたためか、俳句の季語になる程の人気はなかったようです。そのためか「遍路」が季語として定着するのは明治に入ってからのようです。「遍路」を季語にする上で、高浜虚子の役割が大きいのですが、虚子は松山の人で春になると遍路が増えてくることを、若い時代から良く見て知っていたからであろうかと思います。

 

最近は歩いて回る「徒(かち)遍路」だけでなく、バスや自家用車などでさっさと回る遍路もあり観光化した面もあります。それでも信仰の気持ちで巡礼する人々も少なくありません。現代人の目で「遍路」の佳句を作っていただきたいものです。

 

■『NHK俳句』2013年3月号より

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