趣味

「主役はいまだにやりたくない」——千葉繁さんがザコキャラに抱く思い


2015.09.10

声優を夢見る若者へ「まずは徹底的に、最低10年は体を使った芝居を勉強しなさい」とアドバイスする千葉繁さん。撮影:石川登

超ハイテンションなナレーションや自由奔放なアドリブなど、視聴者の耳と心をググッと引きつけるインパクト満点の芝居で大人気の千葉繁(ちば・しげる)さん。『北斗の拳』で、ザコキャラたちの断末魔に込めた思いとは?

 

*  *  *

 

ザコキャラたちにだって人生があれば家族もいる

 

――千葉さんの代表作の一つである『北斗の拳』との出会いは?

 

千葉 オーディションもなかったので、作品名以外は何も知らないまま、最初の収録に行きました。当時は、今のように事前に台本をもらいませんからね。スタジオの台に積んである台本を1冊取って読むんですよ。「自分はジョーカーという役か。へえー」みたいな状態です。絵もまったくなかったので、もうやりたい放題ですよ(笑)。といっても、名前のある役は根底にあるものを壊せない。その回の中で死んじゃうキャラクターのほうがいろんな人生観を付加できるので面白いですね。逆に、メインの役や主役はいまだにやりたくないんです。

 

――千葉さんの演じる、いわゆるザコキャラのアドリブは話題を集めました。

 

千葉 ザコキャラにだって、きっと家族がいるわけですよ。それで、今日は子どもの誕生日だからケーキでも買って帰らなきゃとか思いながら、仕事のためにとモヒカンを整えて、「がんばってくるからね〜」と働きに出てる。なのに、あっさり殺される。しかも、ただの壮大な兄弟ゲンカに巻き込まれているわけですから。たまったもんじゃないですよ(笑)。

 

――そういうザコキャラのバックグラウンドも、その場で想像するのですか?

 

千葉 そうそう。キャラクターを見てね。だいたい、ああやって着飾るやつって、弱くて自信のないやつなんですよ。だから、モヒカンにする前の生活って何だったんだろうとか、想像するんです。八百屋さんだったかもしれないし、数学の先生だったかもしれない。でも、あんな時代になっちゃって、お金を得る手段がそれしかなかったから、モヒカンになった。なのに、あのバカ息子どものケンカに巻き込まれて死んでいく理不尽。そこを、どうにかして活かしてやりたいと思ったんですよ。微力ですけどね。

 

――そうやって、ザコキャラにも存在感を出してあげていたんですね。

 

千葉 ええ。みんなで順番に「レバ」「ニラ」「イタ」「メ」って言いながら死んでいって。よーく聞くと、「レバニラ炒めライス」と言ってるとか、好き勝手やってましたね(笑)。一度、「ちーばぁー!」って言ったら、「それはダメ」と言われてNGになりましたが(笑)。

 

ハイテンションな語りでもザコキャラの叫びを代弁

 

――『北斗の拳』の超ハイテンションな予告やナレーションは、どのような経緯で生まれたのでしょうか?

 

千葉 結果的にそうなってしまった感じなんですよ。それまでナレーションというのは、ナレーターの方が淡々とかっこよく言うものだったんです。でも、あんなバカどもの闊歩(かっぽ)するこの作品の世界観がかっこいいはずがないだろう、と。だから、あのザコキャラたちの叫びを代弁するというのかな。ザコキャラたちの怒りとかを込めていたら、どんどんテンション高くなっていっちゃったんです。ただ、当時はそういう声を張る系の役がすごく多くて。ナレーションとしてのキャラクターを変えないと体がもたないと思って、3週ぐらい講談調に変えたんですよ。そうしたら鬼のような数の投書が来て、ハイテンションに戻しました(笑)。

 

■『NHK趣味どきっ!一声入魂!アニメ声優塾』より

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