趣味

高尾紳路十段の初タイトル奪取 ― 不断の努力が結実した日


2014.11.19

第60期本因坊戦就位式。師・藤沢名誉棋聖をはじめ、地元のファンや関係者が大勢お祝いに駆けつけた 写真提供:日本棋院

山下敬吾(やました・けいご)九段、張栩(ちょう・う)九段、羽根直樹(はね・なおき)九段といった同世代の棋士たちが次々とタイトルを獲得するなか、リーグ入りすらままならなかった20代の高尾紳路(たかお・しんじ)十段。焦りながらも、「とにかく勉強していれば、いずれ何かいいことがあるのではないか」とひたすら自分を信じて勉強し続けた。

 

そうした絶え間ない努力が、ついに実を結ぶときがやってきた。2003年の十段戦で挑戦者となり、五番勝負では2勝3敗で敗れたものの、その翌年の本因坊戦にて念願のリーグ入り。高尾十段のサクセスストーリーは、ここから始まる。

 

*  *  *

 

十段戦で初めてのタイトル戦に臨んだものの、王立誠(おう・りっせい)先生に2勝3敗で負かされました。

 

目標だったタイトル戦の舞台に立てたことで充実感はありましたが、あと一勝及ばずタイトルを逃したことが自分の中ではかなりのショックで、それまでと同様に「俺はなぜ結果を出せないのか…」という思いのほうが大きかったことを覚えています。

 

ですから翌年、本因坊戦リーグ入りを果たしたときも「やっと入ることができた」という気持ちこそありましたが、安心感や満足感は全くありませんでした。他の三人ははるか上の存在でしたから…。「もっと上を目指さなければ」という思いと同時に、「とりあえずはリーグ残留」という現実的な目標を抱いてリーグ戦に臨んだものです。すると自分でも本当にびっくりしたのですが、いきなり挑戦者になってしまいました。

 

本因坊戦リーグは4勝3敗の勝ち越しでも陥落する可能性がある厳しいリーグですから、5勝目を挙げた時点でホッとひと安心。そうしたら最終戦にも勝って6勝1敗で、趙善津(ちょう・そんじん)さんとのプレーオフにも勝てて挑戦者に。

 

リーグ開幕時には考えもしなかった結果となったのですが、このときは本当にうれしかった。七番勝負に対する不安も少しは感じましたが、それ以上に「二日制の碁が打てる!」という棋士としての喜びが何倍もありました。

 

迎えた七番勝負の初戦。僕は白番だったのですが、最初の一手を打ったときの気持ちは今でも忘れられません。「この碁を打つために今まで勉強してきたんだ。ようやく実った」という気持ちでいっぱいだったのです。

 

盤上だけに集中することもでき、結果も内容もよかった。この本因坊戦以降、たくさんのタイトル戦を打たせていただきましたが、このシリーズのこの第1局が最も精神的に充実していて、内容も納得のいくものでした。

 

このときの本因坊が、ほとんど無敵と言っていいくらい勝ちまくっていた張栩さん。ですから勝算などは全くありませんでした。でも4連敗というのもカッコ悪いから「何とか一つくらいは入らないものか」と思い「とにかく、がむしゃらに打とう」という気持ちで七番勝負に臨みました。

 

そうしたら運よく1局目を勝てまして、「ではもう一局何とか」と、そういう気持ちで一つずつ積み重ねていったら、驚いたことに3連勝。そして4勝1敗でタイトルを取れるなんて、開幕前には全く想像さえしていませんでした。第5局も半目勝負で、最後にぎりぎり僕にいい手があっての半目勝ち。あれは本当にうまくできていて、運がよかったとしか言いようがありません。

 

その第5局が終わった直後はボーッとしてしまっていたのですが、インタビューで「史上14人目の本因坊ですが」と言われ、60期の歴史の中で過去に13人しかなっていないことを知りました。それで「自分が14人目になれたんだ」と思ったらぐっとくるものがあって「ああ、本当に光栄だなぁ…」と思ったことをよく覚えています。

 

■『NHK囲碁講座』2014年11月号より

このエントリーをはてなブックマークに追加

  • テキストビュー300×56

  • bnr-eigo2018_300x56

000064072342018_01_136 

韓国ドラマ・ガイドブック 仮面の王 イ・ソン

2018年04月17日発売

定価 1620円 (本体1500円)

000069235832018_01_136

NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 半分、青い。 Part1

2018年03月26日発売

定価 1188円 (本体1100円)

000061992612018_01_136

NHK趣味の園芸 栽培のコツがわかる ベランダガーデニング

2018年03月17日発売

定価 1188円 (本体1100円)