趣味

新年ではなく、冬の季語「餅」


2013.03.03

「餅」と聞くと、ほぼ同時に「正月」を想像しないだろうか。正月を迎えるための一時金を「餅代」と言っていたことなども、同時に思い出されよう。「草樹」会員代表の宇田喜代子氏に、餅と生活のかかわりを聞いた。

 

*  *  *

 

俳句歳時記では「餅」は新年季語ではなく、冬の季語として登載されています。ところが「鏡餅」「雑煮(ぞうに)餅」は新年季語となるのです。まずこの区別を知っておくことです。

 

「餅」にかかわる「餅米洗ふ」「餅搗(もちつき)」「餅筵(もちむしろ)」「餅配」「水餅」なども冬の季語です。「もちつき」はかろうじてわかるけれど「餅筵」以下は何のことだか字も読めないよ、という若いかたの声が聞えるようです。

 

「餅」を搗くためには、餅米の用意をするところから始めます。臼(うす)や杵(きね)や薪などの外に「餅筵」「餅箱」「取粉(とりこ)」などを揃え、搗き手、捏ね取りなどの人手をそろえます。

 

いよいよ数え日(今年も残り僅かだと五指を折って数えるくらいに押し詰まった歳末のことで、晩冬の季語です)となりますと、餅搗きの日取りを決めるのですが、かつては「苦の餅を搗く」つまり九が苦に通じるということから二十九日だけは避けたものです。大晦日も「一夜飾り」を厭(いと)ったために、おのずと十に月二十五、六、七、八あたりを「餅搗き」の日に都合をつけるよう、やりくりをしなくてはならないのです。

 

ことほど作用に、「餅」を搗くということは食べ物を調達するということを越えた大仕事だったのです。

 

■『NHK 俳句』2013年1月号より

 

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