趣味

「お接待」はサービスではない – お遍路さんが気をつけたいこと


2014.09.16

遍路宿・八丁坂に着くとまずふるまわれる手作りのいちご大福は、お客さんが到着する前にひとつひとつ手作りしている。撮影:米田樹央

四国八十八ヶ所を巡礼する「四国遍路」。お遍路さんは食べ物や飲み物をふるまわれたり、無料で宿や休憩所を提供されたりする“お接待”を受けることも多いでしょう。この風習について、先達の資格を持つ石川達司さんはこう話します。

 

*  *  *

お接待の根底にあるのは“思いやりの文化”

 

四国ではお遍路さんは大師様と同じと考えるため、お接待は「大師様への功徳」なのです。また「自分の代わりにお参りを託す」という意味もあるため、時にはお賽銭など現金を渡されることも。

 

道筋の小さな休憩所から、うどんやお菓子、お茶などを出してくださる接待所、ほかにも善根宿や通夜堂など、お接待にはいろいろな形があります。

 

たいていの札所近くには「遍路宿」と呼ばれるお遍路さん向けの比較的安い宿があります。大寶寺から岩屋寺への道中で最大の難所、八丁坂から徒歩5分の「いやしのお宿 八丁坂」も、女将の大野愛子さんが「理想の遍路宿」を目指して2012年に開業したばかりの遍路宿。ご自身も先達である大野さんが八丁坂を歩き、その厳しさを実感していたため、玄関先には荷物を預かる無料ロッカーを設置しました。また寝心地のいい布団をそろえ、部屋にはトイレをつけたのも、長い距離を歩いてきたお遍路さんにしっかり休んでほしいという気持ちから。早めに出発したい人には朝食の時間を繰り上げるなど、お遍路さんが快適に過ごせるような気遣いに満ちています。

 

あるお寺の副住職がこんなことをおっしゃっていました。

 

「四国はもともと農業や林業など体で稼ぐ人が多かったから、しんどいときの気持ちがわかる。そうすると苦労をしている相手には自然と手を差し伸べようと思う。そんな“思いやりの文化”がお接待の精神の根底にはあるのかもしれませんね」

 

お接待≠サービス 勘違いは禁物です

 

お接待は基本的にお断りせず、ありがたくお受けするのがマナー。お礼に「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」と唱えて納札を手渡すのが作法とされていますが、とっさに反応できなければ、心から感謝の言葉を述べるだけでもいいでしょう。

 

ただし、お接待はあくまでも接待する側が、相手の気持ちに共感したり、相手を思いやったりする気持ちから善意で行っていること。決して誰もが受けられる無料のサービスではない、ということは忘れないでください。

 

最近はインターネットなどに書き込まれた、「ここへ行けば泊めてもらえる」「あそこでは食べ物が無料でいただける」というような情報を見て、それを目当てにしているお遍路さんもいるようです。決まった日時にオープンしているお接待所などは別として、普通のお接待や善根宿などは、そのときに接待した人が、そのお遍路さんに何かしてあげたいと思ってしたこと。共感されなければ、あるいは施す側の都合によってはお接待されないこともあります。だからといって不満に思うのは筋違い。お接待は感謝の心と最低限のマナーを持って、心して受け止めましょう。

 

■『趣味Do楽 はじめての四国遍路旅』2014年8、9月号より

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