趣味

大淵盛人九段が尋常でない忍耐力を培ったすさまじい内弟子時代


2014.08.10

撮影:小松士郎

内弟子6人をプロの世界へ送り込んだ大淵盛人(おおぶち・もりと)九段は、自身もプロを目指し、大枝雄介(おおえだ・ゆうすけ)九段(故人)の内弟子として修行を積んだ。その内弟子生活は非常に厳しいものだったという。

 

*  *  *

 

日々忍耐だった内弟子生活

 

私が碁と出会ったのは中学校1年のときですから、プロ棋士になる人間としては、かなり遅いスタートでした。父に教わり、のめり込んでいったのですが、今になって振り返ってみると、私は指導者に恵まれていましたね。あらかじめレールが引かれていたのではないかと思うくらいに人とのご縁をいただきまして、次々とすばらしい指導者と巡り合ったのです。

 

私は福岡県の出身なのですが、久留米市の出でおられる山下順源先生(故人=七段。山田規三生九段や石田篤司九段らの師でもある)とのご縁にも恵まれ、私の師匠となる大枝雄介九段(故人)を紹介していただきました。

 

それで中学校卒業と同時に、プロを目指して東京へと出てくることになり、大枝先生の内弟子となりました。一人で見知らぬ土地へと出ていくことに関しての不安はなく、楽しみしかなかったように覚えています。当時の大枝家にはすでに大勢の内弟子がいて、一番弟子の安田泰敏さんを筆頭にマイケル・レドモンドさん、下地玄昭さん、恩田烈彦さん、益子富美彦さんといった面々でした。

 

そしてこの内弟子生活ですが、10代の男が集団で生活するわけですからね、すさまじいものがありました。イジメのようなものも当然ながらありまして、東京に出てきたことを激しく後悔したこともありました。しかしプロ棋士になることを目指して上京してきたからには、プロの資格を得なければどうしようもありません。ですから私としては、ひたすら碁だけに専念する毎日を送るようにしました。本当に大変な内弟子生活でしたが、尋常でない忍耐力がついたことは間違いありません。

 

そんな中で恩田烈彦さん。この方は実に真面目で優しい人で、掃除の方法や食器の洗い方をはじめ、内弟子生活において必要ないろいろなことを教えてくださいました。例えば鍋の洗い方でも「こういう磨き方をすると、碁が強くなるよ」とか…。まあ、何の根拠もないのですが、そうしたことを一つ一つ積み重ねることによって、碁の技術以外で大事な何かを身に付けることができたように思います。

 

具体的に言えば、自分自身を厳しく律しないことには、プロ棋士になるという目標を達成することなどできないということでしょうか。何の科学的根拠もなく、昔ながらの修業方法ではありますが、目標にいち早くたどりつく手段だったのではないでしょうか。後に私が内弟子をとったとき、この経験が大きな財産・指針となってきます。

 

そして私は院生2年目という早い時期に入段することができたのですが、やはり厳しい内弟子生活の中で碁漬けの毎日を送ったということが大きかったのでしょう。何はともあれ、プロ入り後の6年間とを合わせて計8年間住まわせていただいた大枝先生には感謝しています。

 

■『NHK囲碁講座』2014年8月号より

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