趣味

タマネギを切るとなぜ涙が出るの?


2014.06.17

植物が秘める多くの「ふしぎ」を甲南大学理工学部教授の田中修(たなか・おさむ)さんがやさしく解き明かす連載「植物はふしぎ」。6月号ではタマネギの3つのふしぎに迫っています。本稿では「タマネギを切ると、なぜ涙が出るのか?」という誰もが一度が疑問に思う謎を取り上げます。

*  *  *

2013年、この疑問に関する研究が、イグ・ノーベル賞の化学賞に選ばれました。この賞は、1991年にアメリカで創設されたもので、ユーモアにあふれ、考えさせられる研究に与えられるものです。「イグ」は反対を意味する言葉で、「後に続く語句を否定する」といわれます。ですから、イグ・ノーベル賞は、「裏のノーベル賞」といわれることもあります。

さて、この疑問は、「涙を出させる催涙成分のもとになる物質が、タマネギには含まれている。タマネギを刻むと出てくる汁がその物質と反応すると、タマネギの風味を出す成分と催涙作用をもたらす成分がつくられる」と説明されてきました。この説明は正しく、その物質と反応するのは、汁に含まれる「アリイナーゼ」という物質と考えられていました。

そこで、イグ・ノーベル賞を受賞した人たちは、汁の中に含まれるアリイナーゼだけを取り出して、風味を出す成分と催涙作用をもたらすもとになる物質と反応させました。すると、風味を出す物質はつくられましたが、催涙作用をもたらす物質はつくられませんでした。

ということは、催涙作用をもつ物質がつくられるためには、汁の中に含まれているアリイナーゼ以外の物質が働いていることになります。イグ・ノーベル賞の受賞者らは、汁の中に含まれるその物質を突き止め、「催涙因子合成酵素」と名づけたのです。

それだけではありません。

彼らは、「その物質が働かないようにすれば、催涙成分はつくられないので、“涙の出ないタマネギ”ができるはずだ」と考えました。そして、遺伝子組み換えという技術を使って、その物質が働かないようなタマネギをつくり出したのです。2008年2月のことでした。ですから、刻んでも涙が出ないタマネギは、すでにつくられているのです。ただ残念なことに、涙の出ないタマネギは、遺伝子組み換えという技術を使って生まれたものですから、まだ当分、私たちの口に入ることはないでしょう。

■『NHK趣味の園芸』2014年6月号より

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