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趙治勲二十五世本因坊が告発する、兄弟子・石田芳夫二十四世本因坊の“悪行”とは


2014.06.21

イラスト:cus³

趙治勲(ちょう・ちくん)二十五世本因坊は、同じく木谷實門下の石田芳夫(いしだ・よしお)二十四世本因坊の悪口をいろいろなところで言っているため、「あんなことを言っても大丈夫なの?」とよく聞かれるという。しかし趙二十五世本因坊は「悪口ってね、信頼していないと言えません。石田さんは冗談が通じるやさしい人」とどこ吹く風。今日も石田二十四世本因坊の“悪行”を告発する。

*  *  *

ぼくが内弟子だったころの話です。木谷道場は神奈川の平塚から東京の四谷に移っていました。周りは先輩ばかり。久島国夫(九段)さん、加藤正夫(名誉王座)さん、それに佐藤昌晴(九段)さんもいたな。中でも強かったのは石田さん。でも、木谷先生と奥様は加藤さんのほうが気に入っていたようです。真面目に勉強するし、人柄もいいからね。石田さんは、生活態度は劣等生でした。碁だけは強かったんだけど…。

座っているときはギターを弾き、寝転がってはマンガを読む。もう、どうしようもない弟子でした。姿が見えないと思うと、隠れて酒を飲んでいる。だからね、思うんです。この時期にもっと勉強していたら、すごいことになっていたはずだと。ぼくなんかぶっ飛んでいると思いますよ。

近くにスナックがありました。ウイスキーがカッコよく思われていた時代です。皆さん、知っているかなあ。とあるメーカーの「オールド」って分かりますか? 通称は「だるま」で、同じところから出ている「角(カク)」という銘柄より少し高い。「チクン、酒はだるまに限るぞ。酒はだるまを飲まなければいかん」なんてよく言われたものです。石田さんも酒の分かる年でもないだろうにね(笑)。でも当時のぼくは、「そうか、そうか、そういうものか」と感心していたなあ。

道場では独立の「時」が一大イベントです。平塚のころは棋院まで遠いので、入段して独立を願い出れば何とか許してもらえました。でも四谷に道場が移転すると少し雲行きが変わってきました。市ヶ谷にある日本棋院には歩いていけるほど近い。独立するための明確な理由が見つけにくくなったんですね。

石田さんは遊びたいから一刻も早く独立したい。24時間、ギターを弾き、マンガを読み、酒を飲んでいたい。そういう人間です。でも師匠と奥様は許してくれない。当然です。道場にいても勉強しないんだから、一人にしたらどうなるかは、まさに火を見るより明らか。それでも石田さん、独立を何度も願い出ました。

そこで、「タイトルを取ったら」という条件が示されました。そしたら人が変わった。石田さん、必死に勉強したんですよ。そして何と、本因坊を取っちゃった!師匠夫妻はこういうヤツがタイトルを取れるとは思わなかったんでしょうね。だからもう一度条件を提示しました。

「あと一つタイトルを取ったら、今度こそ独立を許そう」

そしたら石田さん、どうしたか。なんと、名人になっちゃった(笑)。

名人本因坊を内弟子として道場に置いておくわけにはいきません。師匠はついに独立を認めました。そして、いよいよ引っ越しが翌日に迫ったある日。石田さんがこう声をかけてきました。

「チクン、来い。打とう」

一日中、打ってもらいました。こんなこと、普通はありえません。師匠と弟子なら入門のときに一局、破門のときに一局、打ってもらえる。でも石田さんはぼくから見て兄弟子。兄弟子と対局なんて考えられない!

感激です。碁を打ってもらえることがこんなに感動的とは思わなかったです。それに天下の名人本因坊。夢見心地ですよ。

こんなふうに書くと石田さんがすごくいい人に思えるでしょうね。でもぼくは分かっています。石田さんの本心が。この対局はね、口止め料の代わりなんですよ。隠れて酒飲んだり、ギター弾いていたりしていたことを黙っていろというね(笑)。

これからもぼくは告発を続けていきます。石田さんの悪行、そして思い出を忘れないために。

■『NHK囲碁講座』2014年6月号より

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