趣味

向井千瑛女流本因坊、あえて準備ゼロで挑んだ五番勝負


2014.05.20

第32期女流本因坊戦挑戦手合五番勝負第5局(2013年)。写真提供:日本棋院

昨年の11月、初タイトルとなる女流本因坊を獲得した向井千瑛(むかい・ちあき)五段。破った相手が、女流タイトルをこの数年にわたって独占し続けてきた謝依旻(しぇい・いみん)六段であっただけに、その価値も絶大である。向井女流本因坊がタイトルをかけた五番勝負を振り返る。

 

*  *  *

 

私は予選からのスタートで、これが2月から始まったのですが、その後の本戦期間中もずっと、謝さんに挑戦して戦うことをイメージして対局していました。

 

そして実際に挑戦権を得ることができたのですが、前回の挑戦手合とはかなり間が空きまして、1年くらい謝さんと対局していなかったのです。以前は短い間隔で挑戦手合が続いていて、失敗してはまたすぐに挑戦という具合だったので、自分の気持ちを整理しきれないまま次のタイトル戦に臨んでいた部分があったのです。

 

でも今回は間隔が空いたので、気持ちがしっかり切り替わっていまして、本当に楽しみでした。また謝さんと打てるという喜びで五番勝負を迎えることができたことが、何よりも大きかったと思います。

 

でも同時に、相手が謝さんであることを特別意識し過ぎないようにもしました。相手よりも自分の実力を出し切ることに集中したのです。

 

私はふだん、対局前から布石の作戦とかは決めないタイプなのですが、これまでの謝さんとの挑戦手合では「謝さんはきっとこうくるだろうから…」などと、いつもしていないことをしていたのです。

 

しかしそういう準備をしても、なかなかそのとおりにはならないんですね。そういう経験があったので、今回は「ふだんと同じ気持ちで、自分の打ちたい手を打ったほうがいいのでは」と考えました。なので今回は、準備をまったくしませんでした。

 

これがよい結果を出すことができた要因なのかどうかは、正直なところ分かりません。しかし「謝さんを意識するよりも、自分の力を出し切ることのほうがとても大切なのではないか」と思い、それを実行できたことは確かです。

 

五番勝負は○●○●という流れで最終局まできたのですが、この第5局は「本当に運がよかった」ことも大きかったと思います。途中ではあまりの形勢の悪さに、諦めに似た気持ちもありました。でもそういう状況の中で「どれだけ粘れるか」ではなく、より強い気持ちで「チャンスがある手を打ち続けるしかない!」と思って打ち続けたことが、最後に幸運を運んでくれたのだと思っています。

 

タイトルを取ることはプロになったときからの目標でしたので、やはり純粋にうれしいのですけれど、今回の五番勝負で「自分はまだまだ実力が足りない」ということも痛感したので、タイトルホルダーとしてふさわしい実力を付けなければと、改めて思っているところです。そして碁の力だけではなく、人間的にも…。まだまだこれからです。

 

■『NHK囲碁講座』2014年5月号より

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