趣味

医師免許を持つ棋士 坂井秀至八段、プロ入りまでの道程


2014.03.17

坂井秀至八段 撮影:小松士郎

1月にご紹介した石倉昇九段が「東大卒→銀行員→棋士」という異例のキャリアを持っていることはつとに有名であるが、今回のゲストである坂井秀至(さかい・ひでゆき)八段の経歴もまた極めて異色である。

 

人呼んで「医師免許を持つ棋士」。

 

7歳(小学校1年生)のときに、医師である父から囲碁の手ほどきを受け、小学校3年生のときにはすでに三段で打てるようになっていた。その頃から囲碁教室へ通い、小学校、中学校、高校のすべてで全国優勝。しかし、学業も一生懸命やっていたので、囲碁だけに専念する踏ん切りがつかなかったという。

 

京都大学医学部で学びながら、アマチュア本因坊戦やアマチュア最強戦をはじめとする数々の大会で優勝し、2000年には世界アマチュア選手権で優勝。アマチュア碁界屈指の強豪として、その名を知らしめた。

 

京都大学付属病院への配属も決まっていた中、プロ棋士へ転向する決心をさせたものは一体何だったのだろうか。

 

*  *  *

 

高校卒業時の僕は、自分の実力に自信が持てなかったのです。棋士への道も魅力的に映ってはいましたが、医学にも興味があったので、まずはこちらで頑張ってみようかと…。囲碁に関しては「アマチュア選手として世界一になる」という目標もありましたからね。

 

それがなぜ最終的にはプロ棋士になったのかというと、7年間の大学時代で「自分の実力がかなり向上している」という手応えをつかめていたからなのです。

 

中学生時代から藤沢秀行先生(名誉棋聖=故人)にかわいがっていただきました。そして大学時代には毎月1回とか先生のお宅に伺って碁を教わったり、毎週のように電話で碁のお話をさせていただいたのです。

 

そういう過程で、大学を卒業する2、3年前くらいから、囲碁の実力がぐんぐんと上がっていると感じるようになりました。自分でも驚くくらい、かなりの手応えで。それで「これなら囲碁に専念してやれば、かなりいいところまでいけるんじゃないか」と思うようになっていたのです。

 

例えば、藤沢先生が主宰しておられた合宿がありまして、若手棋士数十人に交じって僕も参加させてもらっていました。そこで何十局と碁を打つのですが、その中で割と上位に入賞するようなことが続いていたのです。

 

また大学卒業の前年に、世界アマチュア選手権で優勝したことも大きかった。自分の実力が確かに伸びていることを実感できたのですが、同時にアマチュア選手としての目標というか夢を達成してしまったことで、寂しさも感じるようになっていました。

 

そんなことがあって、藤沢先生とお話をするたびに「ああ、プロでやってみたいな」という思いが強くなっていったのです。

 

そしてもう一つ、もしこのまま医師になったら、子供時代からずっとやってきた囲碁の選手としての人生が事実上、終わるのだろうという思いもありました。それでいろいろと考えた末に「医師免許取得後、棋士に転向する」という結論を出したのです。

 

それで、師匠である佐藤直男先生に相談しました。僕は佐藤先生に見いだされたので、関西棋院にお世話になるべきだと…。その結果、院生の年齢制限はとっくに過ぎていたのですが、特例という形で入段させていただくことになったのです。試験碁を4局打って、その結果で何段からスタートするか決めるというもので、4戦全勝だったため、2001年9月1日付で五段デビューとなりました。

 

■『NHK囲碁講座』2014年3月号より

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