趣味

エリート銀行員からプロ棋士へ…石倉昇九段の“背水の陣”


2014.01.21

石倉昇九段。撮影:藤田浩司

石倉昇(いしくら・のぼる)九段といえば、やはり真っ先に挙げられるのが「異色のキャリア」である。

 

高校、大学時代ともに全国優勝を果たし、東京大学卒業後は日本興業銀行に入行。社会人としてエリートコースを歩んでいた。しかしその2年後に、プロ棋士へと転向したのである。

 

はた目には「とんでもなくリスクが大きい転職」と映るのだが、本人はどういう思いだったのか――そのいきさつを語っていただいた。

 

*  *  *

 

大学時代に学生本因坊というタイトルを取り、それで銀行に就職したのですが、その際にプロ棋士になろうという気はありませんでした。

 

でも社会人2年目の冬、囲碁使節団の一員として、プロ4人と私の5人で中国に行くことがありまして、2週間にわたってプロと一緒に過ごすという経験をしました。それで「棋士ってすばらしいなぁ」と思い、中国から帰ってすぐに「プロになろう」と決断したのです。

 

もともと、碁は大好きだったのですが、当時の私はアマチュア目線で碁の世界を見ていたのですね。プロ棋士に対して「碁だけをやっている、ちょっと世間から隔離されたような存在」と感じていたのです。しかし、この中国遠征でご一緒させていただいた先生方がすばらしい人たちで、碁をやっているだけでなく社会との接点とか、棋士の仕事を通じていろいろな世界を見ることができるということを教えてくださったのです。決して狭い世界ではないと。

 

それで、中国から帰って半年後に銀行を退職し、それからプロ棋士の試験を受けました。ですから、背水の陣ですね。そこで落ちてしまったら失職という状態でした。でも、そういう状況だったからこそ、入段予選を勝ち抜くことができたのではないかと思っています。

 

実は、プロを目指す子供たち=院生は、私が思っていた以上に強かった。私は「学生本因坊の経験があるから」と安易に考えていたのですが、入段予選を打っている途中で「あ、これは参ったな」と自分の考えが甘かったことを思い知らされたのです。

 

同期入段には依田紀基さんをはじめ強い人がたくさんいたので、私はぎりぎりでの入段でした。背水の陣という執念で、何とかほかの院生に勝てたのだと思っています。

 

■『NHK囲碁講座』2014年1月号より

このエントリーをはてなブックマークに追加

  • bnr-eigo2019

  • テキストビュー300×56

  • bnr-eigo2019

000000162762020_01_136

サラリーマン川柳 とびきり傑作選

2020年06月10日発売

定価 1045円 (本体950円)

000069233842020_01_136

NHK大河ドラマ・ガイド 麒麟がくる(後編) 

2020年05月21日発売

定価 1210円 (本体1100円)

000061992922020_01_136

NHKすてきにハンドメイドセレクション 着心地かろやか 手縫いのおとな服

2020年05月21日発売

定価 1430円 (本体1300円)