趣味

落語の生みの親はお坊さん


2013.12.26

鎌倉市にある本興寺のあたりは、車大路と小町大路が交わる辻(十字路)となっており、かつてここで日蓮が辻説法をしたことで知られている。撮影:武藤奈緒美

笑いを誘う落語と、真理を語る仏教。一見、相反するかのような両者だが、実は深いつながりがあるといわれ、縁(えにし)は落語の誕生にも関わる。浄土真宗本願寺派 如来寺第19世住職の釈徹宗(しゃく・てっしゅう)さんが、説法と落語のつながりについて解説する。

 

*  *  *

 

唱導あるいは、説法、説教、法説、法談。これらは、平安末期ころからその技法が次第に確立していったとされ、いずれも僧侶が仏教の教えを説き聴かせることが眼目。しかし、「お説教をくらう」といえば、これすなわち「小言」に通じるように、真価はともかくとして、庶民にとっては、その難解さから、多少の苦痛をともなって受け止められがちなのは、今も昔も変わらぬところ。たとえ本道でも、右から左へと抜けてしまっては、元も子もない。

 

というわけで、次第に、経典のエッセンスを取り出して、庶民の日常生活にぐっと引き寄せ、比喩や因縁話を用いて、おもしろおかしく仏法を説く説教者、説教師たちが登場する時代が到来。

 

格調高く講釈する修学僧と、カジュアルな説教師では、面目の格差が存在したようであるが、もちろん民衆の圧倒的な人気を集めたのが、どちらであったかはいうまでもない。仕様はどうあれ、ありがたい教えも人々の琴線(きんせん)に触れて、なんぼ。

 

ちなみに、清少納言の随筆『枕草子』には説教師のことが述べられているくだりがある。そこには、女性たちが着飾って法座に集う様子などとともに、「説経の講師(こうじ)は顔よき。講師の顔をつとまもらへたるこそ、その説くことのたふとさもおぼゆれ」と記されている。要するに「説教師が男前だと、そのお話も、より尊く感じられるわよねぇ」という理屈。平安時代中期において、すでに落語に通じるような娯楽性も、かなり高いものであったことがうかがえる。

 

さらに中世になると、やや職業的な説教者たちも出現。人々を楽しませ、興行的要素を兼ね備えた説教、説法によって生計を立てる半僧半俗の人々が現れるようになってきた。

 

そして、もうひとつ時代が進むと、安土桃山時代から江戸時代初期を生きた傑僧・安楽庵策伝(あんらくあんさくでん)が、『醒睡笑(せいすいしょう)』を著作。これは、策伝が小僧の頃から長年にわたって聴聞してきたお説教、巷間のおもしろい話、味わい深い話などにオチをつけてまとめたものである。実際、現在でも落語のネタとして語られている噺の原型となっているものも多数。ここにも説法と落語のつながりがみてとれる。

 

それにしても、この小話が平成の世にまで落語として継承されるとは……。はるか400年前の策伝和尚はもとより、お釈迦(しゃか)様でも気がつくめぇ。

 

■『NHK趣味Do楽 落語でブッダ 落語がわかる 仏教が楽しくなる』より

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