趣味

ニックネームと棋風


2013.12.28

井山裕太(いやま・ゆうた)棋聖は、昔の棋士にはニックネームが付いていることが多かったが、最近は碁が多様化してきたため、なかなか定着しにくくなってきたのではないか、と考えている。

 

そんな井山棋聖にニックネームと棋風について話を聞いた。

 

*  *  *

 

少し前に「四天王」の方のそれぞれのニックネームを日本棋院で公募したことがありました。山下敬吾名人は「フルスイング」という山下さんの迫力を表現したものになりましたが、あまり定着しませんでしたね。「鋼鉄のじゃがいも」なんていうのも最終選考まで残っていたそうで、「それにならなくてホッとしました」という山下さんのコメントも見たことがあるような気がします。

 

考えてみると、棋風の表現やニックネームというのも、普通には分かりにくいかもしれません。例えば、四天王の一人、張栩九段の棋風は「足が早い」と言われますし、私もそう思います。もちろん張九段が100メートルを10秒台で走るわけではなく、盤上における表現なのですが、盤上における「足が早い」をどう説明するかと言われるとなかなか難しい。言葉にすれば、「先手を取って、盤上の大きなところに先行していく能力」とでもなるのでしょうか。ただ、これは感覚的なところも大きいですし、実際に公募で選ばれた張九段のニックネームは「韋駄天(いだてん)」だったのですが、あまり定着しませんでした。

 

しかし、張九段の碁のスピード感を表すのにぴったりなニックネームが生まれれば、意外と定着するのではないかと思います。

 

その点、武宮正樹九段の「宇宙流」、加藤正夫名誉王座の「殺し屋」、石田秀芳二十四世本因坊の「コンピューター」などはイメージしやすく、棋風ともぴったりだったので定着し、ファンの方に長い間親しまれてきたのでしょう。

 

武宮九段の大模様を重視する独特の棋風を表すのに「宇宙流」というのは夢があるすばらしい表現です。ご本人は「自然流」だとおっしゃっているそうですが、宇宙流がファンの方に広く定着しているのも分かります。また、加藤名誉王座の若いころの棋譜を並べると、本当に豪快に相手の大石をしとめていますし、石田二十四世本因坊の緻密な計算の碁も、当時はインパクトが強かったのだと思います。大竹英雄名誉碁聖の「美学」や林海峰名誉天元の「二枚腰」なども有名です。

 

趙治勲二十五世本因坊の時代から、ニックネームが付きにくくなってきたような気がします。趙二十五世本因坊には型がないというか、本当にいろいろな碁を打つので棋風をひと言で表現しにくかったのでしょう。「七番勝負の鬼」とか「赤鬼」などとたまに書かれていましたが、棋風とは関係のないことなので、現在ではあまり使われていません。現代の棋士は、国際戦の影響などもあっていろいろな碁を打つようになっていますから、ニックネームが付けにくいのかもしれません。

 

■『NHK 囲碁講座』2013年12月号より

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